「現場の本音が見えづらい」人事の課題にTEAMUSを!
働く環境づくりに関わる人のリアルな悩みや課題に寄り添う「働くコンシェルジュ」。今回は、人事の困りごとに対して、組織成長ソリューション「TEAMUS(チームアス)」にできることを探ります。
- photo: Go Kakizaki
- edit: Wakana Yamazaki
- interview & text: Miho Oashi
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INDEX
Profile
林俊祐
コクヨ株式会社
グローバルワークプレイス事業本部 HRCAソリューション部
「TEAMUS」の立ち上げを行う新規事業チームに所属し、ブランディングやプロモーション、マーケティングなどを担当。
北川真衣
コクヨ株式会社
ヒューマン&カルチャー本部 ビジネス&エンプロイーパートナーHR部
HRBP(HR Business Partner)として事業実現のための人的資本面でのサポートを担当。事業部門と伴走しながら課題解決に取り組む。
TEAMUSとは……
コクヨのこれまでの空間事業に加え、企業・働く人々の成長を"チーム"を起点に支援するソリューション。まずサーベイでチームの実態を見える化し、次に対話を通じて課題への気づきを深め、最後に意識と行動に向けて伴走する。「わかる」「気づく」「変わる」の3ステップで、チームの力を引き出し、組織の持続的な成長へとつなげていく仕組み。
人事の仕事は “モグラ叩き” 状態?


HRの困りごとはなんですか?
北川 : 人事の仕事って、どうしても対処療法になってしまいます。あちこちで問題が起きては対応する、その繰り返しで、まさに「モグラ叩き」状態。特にコクヨみたいに変革を進めてる会社だと、組織が成長していく過程で人も組織も変化についていけなくなることがよくあるんです。
具体的な問題について教えてください。
北川
: 変革期においては、新しいビジョンに共感できずモチベーションが下がるケースや、人事制度が変わることで評価の仕方も変わって混乱が生じるケースがあります。もっと細かい単位では、グループのミッションや個人ミッションに対して、「自分はどうしたらいいんだろう」と迷子になるケースがあります。組織のかたちを変えたりチーム編成を変えたりした後、半年から1年ぐらいすると、慣れない環境に疲弊してメンタルダウンする人が出たり、チームとして成果が残せなくなったりすることもありますね。
ただ、マネジメントがうまく機能していれば、変革の際にも、会社のビジョンをうまく翻訳して、どういう方向性なのかを噛み砕きながら伝えることができるんです。そうすると個人の腹落ち度、納得度が上がっていくのですが、マネジメントスキルが低いと、上から来た指示をそのまま流すだけになり、メンバーが変化の風をダイレクトに感じて動揺してしまうことがあります。
理想の対処方法はありますか?
北川 : 基本的に日常的な人事の介入は限定的であるべきで、現場のマネージャーが普段からコミュニケーションを取って本質的な問題を拾い上げて解決するのが大前提です。でも、すでに炎上してる状況だと、人事が介入しても「出血を止めに行く」ような対応になってしまう。理想的には、チームが普段から自分たちで機能していて、必要なサポートを受けながら、人事は中長期的な施策で現場を後押しするかたちです。
サーベイでは拾えない 「本音」をどうするか


組織の課題を早くから把握するためにはどんな方法をとるのでしょうか?
北川 : 一つの手段としてエンゲージメントサーベイがあります。客観的な結果をもとに個人と会話ができることがメリットだと思います。一方で課題としては、瞬間的な感情を反映したりもするので、本音を語ってくれているのかという疑問がありました。実際、休職される方のなかには、サーベイの数値がいい方もいるんですよ。サーベイがアラートになりきれていない部分がありますよね。人間関係があるので、個人の結果が上司には見られないとわかってても、やっぱり会社に回答するうえでは、本音は言いづらいというのが実情としてあると思います。
TEAMUSの担当者としては、このような課題をどう捉えていますか?
林
: 開発段階では市場リサーチを通して、エンゲージメントサーベイの結果と現実にギャップがあるということがわかりました。これにはいろんな理由があると思います。例えば、パワーマネジメントで上からの圧力があるとか、日本人的に本音を答えていないとか、あるいは設問が現場の把握に適していないとか。
北川さんがおっしゃったように、サーベイでは本音まで拾いきれないために、予防ができない、結果を見てもアクションが取りづらいというところが一定数あるというのは、私たちも社内のエンゲージメントサーベイを受けたり、お客さんにヒアリングしたりする中で感じていました。そこに対して現場がアクションを取れるにはどうすればよいのかというところから、「TEAMUS」の開発は始まりました。
TEAMUSではどのようにサポートをするのですか?
林 : 現場のミドルマネージャーを中心にチームをサポートしています。目指しているのは、チームが自立して、どんどん自分たちで改善していくというかたちをつくることです。そうすると人事の方も、現場の対処だけで走り回ることなく、将来に向けた戦略や企画などに集中できるようになります。今は人的資本経営という新たに取り組む必要があることも加わり、大変な状況です。そこをサポートしたいと考えています。
従来のサーベイとの違いは何ですか?
林
: 二つあります。一つは、チームの実態を把握できるようにかなり具体的に設問設計している点です。「ビジョンに共感しているか」とか「満足していますか」という聞き方ではなく、「できていますか」と聞くので、実態に近い結果が得られると共に、自分ごととして捉えやすくなっています。
もう一つは、同じ設問に対して「自分」と「チーム」の両方の視点で答えてもらうことで、自分自身を内省したうえで、チームを客観視してもらうようにしています。
実導入から見えた効果と 広がる可能性


2年前に開始したトライアルではどのような取り組みを行いましたか?
林
: お客様のトライアルでは、サーベイと伴走するメニューをセットで提供しました。具体的には、リーダーの方を集めて、実際に自分のチームの結果を見ながら、その場で読み解いてもらったり、リーダーの方に対して我々が分析した結果のフィードバックも行いました。
現場のリーダーからの反応で嬉しかったのは、「TEAMUS」のスコアの精度が高いと感じてもらえたことです。メンバーと一緒に仕事をしているリーダーからすると、チームに対して普段感じていることがそのままスコアに出ているという印象があったようです。また、私たちがフィードバックや分析をしたときに、「今考えているチーム改善の方向性が正しいと背中を押された」という声もいただきました。
コクヨでは今年の5月にTEAMUSを導入しましたが、使ってみていかがですか?
北川
: まだ4カ月ほどしか経っていないので明確に「クリアできた」というところはないのですが、一つキーワードとして「チーム」という言葉が重要だと感じています。コクヨはいろんな制度や働き方も含めて「チームで成果を出してほしい」というキーワードを大切にしています。個人のサーベイも引き続き行っていますが、「TEAMUS」のように主語を「チーム」にすることで、自分のことだと言いにくいことも、「このチームに課題があって、みんなで同じ方向を見て話しましょう」というかたちで対話がしやすくなります。
個人の「誰々さんのエンゲージメントが下がっています」とか「ビジョン共感が下がっています」というような言い方だと議論が活性化しにくいのですが、「TEAMUS」のやり方だと、チームで議論する前提があるので、自分たちで課題を見つけて対話するきっかけになります。
今年は事業変革があり、中期経営計画の初年度で戦略や組織も1月から大きく変わったりしているので、変化が大きかった組織のモニタリングという意味でも活用しています。
TEAMUSが描く 人事とチームの未来像


TEAMUSを開発するうえで大変だったことは何ですか?
林
: 「チーム視点」のソリューションは、これまであるようでなかったため、初めはお客様に「TEAMUS」の価値、実現したい状態を理解していただき、取り入れてみようと感じてもらうことが大変でした。チームに関することって、大事だとは分かっていても現場レベルでの改善には取り組めていない、というのが現状だと思います。特に人事の方からすると、緊急の対応を優先せざるを得ない状況がありますしね。
トライアルの序盤では「これで何ができるの?」と厳しい反応をいただくこともありました。それをクリアするには対話しかないと思い、数十人の人事の方へ提案したり、その都度、提案書を何度もつくり直しました。
TEMAUSに今後期待することを教えてください。
北川
: サーベイ全般に言えることですが、人は瞬間的な気持ちに左右されて回答する傾向があります。その瞬間の気持ちだけでなく、もう少し感情の波も含めて網羅的に見えるようになるといいなと思います。
また、サーベイに限らず新しいことを導入するときに、「これをやる意味は何か」をより伝えられるといいと思います。重要性は皆わかっていても、「わかったけど、あとで」となってしまうことがあるので、その価値をきちんと伝えていきたいですよね。
林
: おっしゃる通りで、社内に浸透・社内で活用されていることが重要だと思います。サーベイに限らず、さまざまな取り組みを定着させること、そしてその結果をどう活かしていくかまでサポートすることが重要だと感じています。「TEAMUS」は、お客様自身で活用できている、チームが成長に向けて自走できている状態をご支援したいと考えています。