HOWS DESIGN

Vol.37 INTERVIEW

【はろここトーク展開事例】GPS機能を活用して、行きたい場所へ行ける当たり前を守る。東海旅客鉄道株式会社 静岡支社の取り組み紹介

掲載日 2026.04.09

(ALT始まり)今回取材をおこなったJR東海の3名。それぞれスーツと制服を着用し、はろここトーク本体とスマートフォンを手に、**でにこやかに笑っている。(ALT終わり)

東海旅客鉄道株式会社(JR東海)静岡支社では、災害等の列車運転見合わせ時に、お客様を救済する目的で運行するバス(以下、救済バス)の運行管理に、コクヨのGPS「はろここトーク」を導入しています。

子どもの見守りGPSとして誕生した「はろここトーク」は、実際のユーザーとなる子どもや親御さんへのヒアリング、児童発達支援施設での検証や監修のもと、インクルーシブデザインプロセスによって開発された製品です。

そんなはろここトークのGPS機能を他のシーンでも活用する新たな協働事例として、子ども向けに開発された端末の「シンプルさ」を活かし、緊急時でも救済バスの正確な現在地を把握してお客様への迅速な案内と乗り継ぎ手配を実現し、移動の安心という「当たり前」を守る取り組みが進んでいます。

子ども向けの見守りデバイスとして誕生した「はろここトーク」が、いかにして鉄道インフラの現場に最適化されたのか 。本事例では、展開事例のひとつとして、JR東海静岡支社における具体的な活用方法と、導入の舞台裏を詳しくご紹介します。

Interviewee

  • 向久保 仁政(むかいくぼ ひろまさ)

    (運輸営業部 輸送課 係長)

  • 花嶋 俊也(はなじま としや)

    (運輸営業部 輸送課(輸送指令) 当直長)

  • 山越 恵太(やまこし けいた)

    (運輸営業部 輸送課(輸送指令) 当直員)

今回取り上げるHOWS DESIGNプロダクト

今回取り上げるHOWS DESIGNプロダクト

コクヨのGPS 「はろここトーク」

製品紹介ページはこちら

開発背景に関する記事はこちら

緊急時の運行支援にGPSを活用し、旅や移動の安心を守る試み。

JR東海静岡支社で、現在はろここトークのGPS機能をどのように活用されているのか教えてください。

向久保さん:災害や事故等で電車が止まってしまった時、お客様を救済することを目的としたバス運行(救済バス)に活用しています。端末導入前は、バスに駅係員もしくは列車の乗務員などを同乗させ、運行管理を行う指令室や到着予定の駅に「現在の走行位置」や「何時ごろに駅に到着予定か」の連絡を取り合う形で対応してきましたが、係員が少ない夜間などの時間帯での対応に課題を感じていました。静岡支社では静岡地区の東海道本線、身延線、御殿場線の3つの路線を管理しています。現在、その中の身延線と御殿場線にはろここトークを導入しています。

(ALT始まり)デスク上で、電話をしながら端末のGPS機能を使う様子。路線図などの運行管理に必要なものも広げられている。(ALT終わり)
なぜその2線区でGPS機能の活用を始められたのでしょうか。

向久保さん:身延線と御殿場線は山間部が多く、雨風や落石などの自然災害や野生動物との接触事故の影響を受けることが多い路線です。復旧まで時間がかかる災害が発生した際、運行指令では安全に列車ダイヤを正常に戻すことを考えるのですが、最終列車が迫っている時間帯などは、お客様をどのように最終目的地まで送り届けるのかということを考えるのも重要な仕事です。救済バスの手配ができても、係員を同乗させることができない場合、「救済バスが今どこを走っていて、あと何分位でどこに到着するのか」を把握することができず、お客様が最終目的地まで向かう列車の手配はとても難しいです。また、このような時間帯では対応できる駅係員が限られており、近年の課題として認識していました。

特に身延線は、観光で利用されるお客様が多く、中には遠方からお越しになるお客様もいらっしゃいます。慣れない場所での緊急事態で不安が募る中、「乗り継ぎの新幹線に間に合うのか?」「最終目的地まで帰ることができるのか?」など心配されることが考えられます。
お客様の不安を少しでも解消し、私たちの持つ課題を解消するためには、位置情報が共有できるGPS端末が活用できるのではないかと調べ始めたのが導入のきっかけです。

(ALT始まり)インタビューを受ける3名の様子。はろここトークの端末を手に語る向久保さんに視線を向けながらしっかりと耳を傾ける山越さんと花嶋さんのほか、机の上には分厚いファイルなどの資料も見える。(ALT終わり)

子どもでも使いやすいから、誰でも使いやすい。現場にもお客様にもやさしいツールを手に入れて。

はろここトークに注目したきっかけは何だったのでしょうか。

向久保さん:やはり国内で信頼のあるメーカーであったことが大きいです。他にもGPS機能のある製品を色々と見ましたが、セキュリティ面も含めて安心できるところと連携することは非常に重要なポイントでした。また、はろここトークはお子様向けの端末ということで、ボタンの役割などがとてもシンプルでわかりやすく、柔軟性がありそうだったという点も大きいです。緊急時には多くの業務が輻輳するため、操作が複雑なものを取り入れるということは現実的ではありません。また、毎日使うものではないため「電源を入れることで位置情報が確認できる!」これくらいシンプルな造りであれば対応できるのではないかという思いはありました。
当初コクヨさんとは何の接点もなかったのですが、はろここトークの製品紹介を読んで、問い合わせフォームから飛び込みのような形で連絡を入れて今に至っています(笑)。

子どもでも使えるシンプルな操作性が、意外なところでも役に立っているのですね。実際に活用されてみて、皆さんの感想はいかがでしたか?

山越さん:導入直後、身延線内で大雨により運転見合わせになったことがあり、実際に活用する場面がありました。その時、お客様には、身延駅から救済バスで甲府駅まで移動していただいたのですが、実際に端末を使ってみると、地図の使い方含めて思っていた以上にスムーズに対応でき、非常に便利だったと記憶しています。個人的には、事前説明だけでは理解しきれなかった部分も実際に触ってみることで「こんな感じか」とわかるところが多いように感じました。
新しいものの導入には得意・不得意もあると思うのですが、実際に触ってみる機会を多く作ることができれば、現場でのイメージも持つことができて印象も変わるかと思います。

(ALT始まり)紺色ジャケットに白のシャツ、グレーのネクタイの制服を着用し、手振りを添えながら話す山越さん。(ALT終わり)

向久保さん:運行管理を行う私たち以外に、直接お客様と接する駅係員からも「実際に走っている位置が見えてわかりやすい」という感想もありました。バスが到着する側の駅では、乗継列車へのご案内を行うための受け入れ準備を行わなければなりません。緊急時は運行管理を行う側も業務が輻輳しており、現場からの問い合わせが繋がらないということも多くあります。はろここトーク導入前は、「今バスがどこを走っているかわからない」という状況で、受け入れ準備を行う駅に対し情報を伝えることができないというのが非常にもどかしく辛かったと聞いています。「今、ここを走っているので、あと何分位で駅に到着する」といった情報を、社員が自分のタイミングで確認できるのは本当に有難いことです。

(ALT始まり)バス車内にて、実際にはろここトークの端末が入ったケースをバス運転士へ手渡す様子。(ALT終わり)
確かに、混乱している現場で確実な情報を共有できるというのは心強いですよね。

花嶋さん:私たちにとっては、すごいツールをもらったなという感覚です。あと何分でバスが駅に到着するかがわかるようになったことで、「バスから乗り継ぐ列車を到着見込みで手配する」のではなく、「バスが到着する時間に合わせた列車に接続手配を行う」という逆転の状況を生み出せました。この一手の確実性が上がることで、お客様が最終目的地までご利用いただくための列車の手配が検討できるため、手配が空振りになる可能性が低くなります。手配が空振りになると、正常に運行しているダイヤにも影響し、他のお客様にもご迷惑をお掛けすることになるため、これらの影響を最小限に抑える必要があります。また、バスが到着するピンポイントのタイミングで駅係員がご案内することも確実にできるようになりました。お客様の最終目的地までのご案内の精度を上げるということは私たちの仕事にとってとても重要な点なので、今後もっと現場で活用できるようになっていくと良いと思っています。

(ALT始まり)インタビューを受ける花嶋さん。紺色のベストに白い長袖シャツ、グレーのネクタイを着用し、落ち着いた表情で話をしている。(ALT終わり)

安全な運行のために、現場への負担は極力減らす。コクヨと二人三脚で見出していったGPS活用方法。

導入にあたって、苦労された点や工夫された点などはありますか?

向久保さん:とにかく現場で動いている社員への負担は極力減らす必要があると考えていました。操作がシンプルで携帯性にも優れていますが、混乱する現場でも無くさないように端末を「ポーチ」に入れました。また、そのポーチには、「担当者毎の操作ガイド」を入れることで、駅係員などへの負担を減らす工夫をしました。

(ALT始まり)ビニールポーチの表にGPS端末はろここトークの操作方法を書いた紙が貼られている様子(ALT終わり)

向久保さん:また、「安全を最優先にバスを運行すること」を念頭に置き、バス運転手を含め、救済バスに関わる全ての人に負担を掛けないように配慮する必要があります。そのため、端末は当社の社員が操作してから、バス運転手にお渡しするようにしています。
苦労した点は、やはり限られた端末の台数の中で、どこにどう配備するとスムーズに運用できるかというのは考え抜く必要がありました。あとは……最初に1週間くらい、個人的に操作方法の特訓を行ったことでしょうか(笑)。

特訓ですか! 具体的にはどのようなことをされたのでしょうか?

向久保さん:現場の社員が疑問に思いそうな点を事前に質問させていただいたり、実際に触ってみながら「こういう場合にはどうやって活用できるだろう?」とイメージして活用方法を検討したり、コクヨの方と一緒に頭を絞りました。鉄道をご利用されるお客様が「駅に行けば列車が来る」という当たり前の日常の裏で、私たち社員が「何をしているのか?」ということを知っていただく機会は少ないです。コクヨの担当者にその部分をどう伝えるか考えながら(一般的な内容ではないため、なかなか伝わりづらいこともありましたが・・・)、搭載機能の中でどうやって現場で活用していくかというところを二人三脚で考えてもらいました。

(ALT始まり)話をする向久保さん。落ち着いたチェック柄のネイビーのスーツを身に纏い、胸元にはJRのバッジが付けられている。(ALT終わり)
業界が異なると言語が異なることもありますもんね。コクヨにとってもたくさんの発見がある対話だったと思います。今後の課題や期待はありますか?

向久保さん:災害等の緊急事態は毎回状況が異なり、一度経験したから同じ対応をすれば良いという訳にはいきません。事態が発生しないと分からない部分が多く、その辺りは課題になるかもしれないと考えています。特に、プッシュ通知機能については、スマホとデバイスを別の場所で使用するなど、コクヨが想定している一般的な使用方法と異なるため、今後の課題になると考えています。

山越さん:現場の人間が電源を入れるというのが案外難しい時もあるように思います。慌ただしい中で忘れていたということが起きないように、私たち運行指令の担当者をはじめ、訓練などを通じ、普段から触れる機会が増やせれば良いと思います。

花嶋さん:導入からあまり時間が経過していないため、実際に触ったことのある人間が少ないというのは事実としてあります。どこまで浸透しているのかという部分も未知数なので、今後何度か使っていくうちに課題や改善点も見えてくると思っています。今はまだ操作に慣れる段階で、音声機能は使用していません。今後、そうした未活用の機能を使っていけるようになると、もっとできることが増えると思います。

向久保さん:まずは緊急時の活用をしっかりと行うことが最優先です。せっかくならそれ以外のシーンでも使えないかを今後検討していきたいです。導入を検討する際、イベント輸送など大規模な輸送を行う場面で、列のお客様の最後尾がどこかデモ機で実験したことがあります。私たち鉄道業界も「発想を転換」することで、活用の幅が広がっていくのではないかと考えています。

(ALT始まり)談笑する3名。背景には運行状況などが可視化されている。(ALT終わり)

取材日:2025.11.19
インタビュー:中西 須瑞化
執筆:中西 須瑞化
撮影:福崎 陸央
編集・校正:田中 美咲、HOWS DESIGNチーム

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