KOKUYO DESIGN AWARD 2026

2026テーマ:「波紋/HAMON Design that Resonates」
1,344点(国内785点、海外559点)の作品の中から一次審査を通過した10点を対象とし、
2026年3月14日に最終審査を開催。
グランプリ1点と優秀賞3点が決定しました。
グランプリ

- 作品名
- ノートの素
- 作者
- 神成 紘樹
作者コメント
糊付けし、背固めした中紙の束です。量と表紙の選定をユーザーに委ね、ノートになる少し前の姿に戻すことで、量産性とパーソナライズの両面を受容するプロダクトになると考えました。多様化が加速し、モノが溢れる今の時代だからこそ、使い手のみならず、作り手、売り手にとっても意味のある提案になると幸いです。


ファイナリストの中でも考え方が大きい作品で、グランプリにふさわしいと思った。半製品とは、言ってしまえば“紙の束”であり、用途を使い手にゆだねるという考え方の提案である。もしかしたらこの方程式を、ノートだけではなく別のプロダクトにも共有化できるかもしれない。そこが「大きい」と感じた理由だが、一方で説明がないと伝わらないおそれもあり、デザイナーとして正直悩むところでもあった。
優秀賞
作品名
g(グラム)
作者
東出 和士
作者コメント
長年使い慣れたペンの、同じ形状で素材だけが異なるモデルを手に取った時、わずかな違和感を覚えました。その正体はたった数グラムの重さでした。“g(グラム)”は、形や素材を変えず、重量だけを繊細に調整したペンシリーズです。書く心地よさは一様ではなく、数グラムの違いによる心地よさや違和感は、多くの人が無意識のうちに感じている感覚でもあります。重さという一点に焦点を絞ることで、自分でも気づいていなかった感覚が静かに浮かび上がる体験をもたらします。

ファイナリストの中でもプロトタイプの完成度が圧倒的に高かった。仕上がりのレベルの高さもさることながら、実は誰もが感じているかもしれない違和感や無意識の感覚を形にしてくれた、すばらしい作品。
作品名
縁で見分けるノート
作者
塚本 裕仁
作者コメント
「見分けたいけど揃えたい」を叶える、表紙の縁に小口染めを施した真っ白なノートシリーズです。控えめでさりげない縁部の配色によりノート同士の識別を可能としつつ、そのシンプルな外観はデスクや本棚に美しい統一感をもたらします。また、着色範囲が表紙全面でなく縁のみであるため、インク使用量を抑えることができ、環境負荷低減にも寄与します。必要最小限に引き算されたこのノートは、視界を静かに整え、学びや創作への集中を促します。

ノートというプロダクトは「紙」と「書く行為」のふたつで成り立っており、機能性の進化という意味ではすでにやり尽くされているところもある。本作品は、プロダクトというよりはデザインのコンペとしてわかりやすいコンセプトの提案であり、審査員もそのコンセプトの部分を評価した。真っ白なノートは当然汚れるので、実用化に際しては検討を重ね、プロダクトとしての精度を高めていく必要があるだろう。
作品名
うつろう手帳
作者
五十嵐 瑞希、瀧澤 樂々
作者コメント
日ごとに予定の量が違ったり、日を跨ぐ予定があったりするのに対し、従来の手帳は1マスの大きさが同じで、罫線によって日と日がきっぱり区切られている。私たちはそのような手帳のあり方に疑問を感じ、「うつろう手帳」を制作した。この手帳には罫線がなく、白とグレーのグラデーション(うつろい)のみで日々を分けている。これにより、書き手は予定の量に応じて1マスの大きさを自分で決めることができ、日を跨ぐ予定もつながりを感じながら書き込むことができる。

僕はグラフィックデザイナーとして紙に機能をもたせる時には、当たり前のように罫線を使う。けれど作者はその線に疑問を感じて、グラデーションのようにあいまいな境界を設けた。実際、時間というものは流れ続け、そこには密度の違いもある。この作品には「人って日々いろいろあるよね」という新鮮な感覚がある一方で、カレンダーという図式からあまり離れていないので、もう少し別のビジュアルデザインもあり得るのかもしれない。
ファイナリスト
作品名
紅白守紙
作者
伝野 輔
作者コメント
紅白守紙は、お祝いの品を保護する梱包材です。紅白の各紙帯を連続的につながりあって全体を構成しています。紙を広げるとハニカム状の構造体ができあがります。梱包材として使うだけでなく、祝いの場の飾りつけやインテリアとしても使用することもできます。誰かを大切に思う気持ちが世界へ波及していくと嬉しいです。
作品名
Edge Index
作者
鳥越 廉樹
作者コメント
高校時代の使い終えたルーズリーフを前にもっと自分なりに美しく整理でき、日々の学びが楽しくなる方法があればと感じていました。その記憶から生まれたのがEdge Indexです。ルーズリーフの小口に染めを施すことで、使うたび積み重ねるたびに色が浮かび上がりページそのものがインデックスとして機能します。小口染めを装飾ではなく情報を分類する構造として捉え直し、記録の積み重なりを整理へとつなげる。学びの痕跡を視覚的に楽しむルーズリーフの提案です。
作品名
AWAI
作者
中村 遼一
作者コメント
「AWAI」は書いた後、線が淡く滲むペンです。 普段、強くはっきりと引かれた線はそれを見る未来の自分や他者へ強いメッセージを発しています。淡く滲んだ線は新しい線のあり方です。新しい線が未来に投げかけるものは「重要だ、違う」といった強いメッセージではなく「注目し直し、再考した方が良いかもしれない」と考える余地を含んだ示唆、問いかけになります。
作品名
OVERLAP
作者
大木 陽平
作者コメント
異なる向きの罫線、線と線の重なり、そして白地。性質の違う領域がノートの使い方に変化をもたらします。場所によって全く違うことを書く、書いてあることを組み合わせてみる、重なった部分を起点に物事を分解する、線に沿って気ままに書き留める。そうした使い方が思考に刺激を与え、思わぬアウトプットを生み出します。罫線というありふれた要素の引き方を変えることで、ノートの可能性を広げます。
作品名
霞の栞
作者
松村 佳宙
作者コメント
白く漂う霧は静かにゆっくりと視界を霞ませ、やがてまた、新しい景色を目の前に映し出していく。本を読んでいる時、私達は様々な情景や物語を想像し、頭の中に描き出します。それらは時に鮮明に、そして徐々に薄れながら、揺らぎを繰り返し、心に記憶されていく。霞の栞は、そんな心の動きにリンクし、文と文を緩やかに繋ぎ、本と人、そして心に浮かぶ情景を静かに繋いでいく栞です。
作品名
a glimmer of inspiration
作者
百石 奈央
作者コメント
私は、コピーライターという仕事をしていますが、ずっと考えつづけていると、ご褒美のようにアイデアが顔を出すときがあります。それはまるで、曇り空の中から、光がふっと漏れる瞬間のようです。これは、ノートに色々書き留めながら考える人に向けて、何気ない文字の羅列にも柔らかなスポットライトを当て、思考のみちしるべとするプロダクトです。
審査員総評(※審査員の肩書は審査当時のものを掲載しております)

木住野 彰悟
6D-K代表 / アートディレクター・ グラフィックデザイナー
キービジュアルを担当するにあたって、今回のテーマ「波紋 HAMON」というのは、1人1人が内側にもっているものを世の中に投じることではないかと捉えた。応募作品も、その人がもともと考えていたこと、熟成させてきた思いをシンプルにプロダクトにしたものが多かった。受賞作はどれもすてきな思いが詰まってクオリティも高く、審査をしながらとても勉強になった。

森永 邦彦
ANREALAGE / デザイナー
これまでの常識や当たり前という“水面”に一石を投じるように、小さな気づきがこれからの暮らしを変えていくような提案を求めていた。それに応えるように、とても個人的でユニークな思考をものづくりに派生させている作品が目立った。初めて審査に参加したが、これまでのプロダクトの常識が覆るような提案、このテーマだからこそ掘り出された原石のようなアイデアに触れ、少し先の未来を見ている気持ちになった。

田村 奈穂
デザイナー
すぐに消えてしまう波紋もあれば、静かに広がっていく波紋もある。自分自身の実感に根ざし、気がついたら多くの人が共感し、自然と環が広がっていくような提案に、たくさん出会えたことがうれしかった。
そもそもデザインをするという作業は、最初から大きな波紋をねらうのではなく、日々、無数の小さな発想や違和感を丁寧にすくいあげ、突き詰めていくような作業なのかもしれないと、改めて思った。

柳原 照弘
Teruhiro Yanagihara Studio / デザイナー
ファイナリストは、それぞれの実体験に基づいて、アイデアのわかりやすさというよりもその広がり方を考えた作品が多かった。その一方で全体的に、テーマ「波紋 HAMON」という抽象的な言葉の捉え方が人や国によって異なり、審査員がイメージしていた「発想が世界に広がっていく」ところまで結びつけるのが難しかったかもしれない。今後もグローバルなテーマで参加してもらえるようなアワードになっていくと良いと思う。

吉泉 聡
TAKT PROJECT 代表 / デザイナー
テーマを決める会議で「当事者意識」という言葉が何度も出たが、それは思い込みとは違って、体感したからこその深い気づきの事。そのリアルな当事者としての体感が、主観を超えて、客観へと繋がり波紋になり得る。ファイナリストからはさまざまな原体験が語られ、現状のスタンダードに対する居心地の悪さとその代替としての提案がなされた。どれも説得力はあったが、アイデアの客観性や造形の合理性に対するアプローチの違いが、受賞の差を生んだのではないか。

黒田 英邦
コクヨ株式会社 代表執行役社長
創立120周年という節目に、改めて「社会の役に立つデザインアワード」を意識しながら審査員と議論し、テーマを決めた。1,300件以上の応募作品と向き合い、例年とは違う顔ぶれや提案が多かった印象だ。このアワードがデザインの力を広め、その可能性を高めるために寄与していることを改めて実感する回となった。不透明で変化の大きい世の中、今後も皆さんと一緒にデザインを盛り上げていきたい。
トロフィー
トロフィーと表彰状は、審査員の木住野彰悟氏にキービジュアルとともにアートディレクションを手掛けていただき、コクヨ代表デザイナーとして、佐藤 芽生、吉田 慎平が参加しました。
左:トロフィー 右:表彰状
最終審査/受賞作品発表/トークショー
レポートムービー
最終審査
10組のファイナリスト達は、今回のテーマ『波紋/HAMON Design that Resonates』に向き合い、熱い想いを込めたプレゼンテーションを行いました。
審査員はそれに真剣に向き合い、自分ならではの視点から生まれたアイデアであること、社会の課題に向き合っていること、製品化の可能性を視野に入れた慎重な審議を行いました。
NEW GENERATION 賞
NEW GENERATION 賞 は、コクヨデザインアワード2026の全応募作品の中から学生の応募作品を対象とし、商品化を前提とせず、アイデアや着眼点に魅力がある作品を選定し、次世代を担う若い世代の次なる挑戦を後押しする目的で設定されました。