コクヨはどんな挑戦を称えるのか。社内表彰「THE AWARDS」がつくる企業文化
会社が「よい仕事」だと認めるのは、どんな挑戦なのか。コクヨの社内表彰「THE AWARDS」が光を当てるのは、成果だけではなく、そこにたどり着くまでの試行錯誤です。2026年は、中国・インド・ASEANなど全世界の拠点にも表彰式を同時中継。受賞者自身が舞台裏を語る4つの「GREAT JOB STORY」から、コクヨが称える挑戦のかたちを追いました。
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THE AWARDS
社員の挑戦や支え合いを称えることで、挑戦する風土を育むコクヨ独自の表彰制度。「社員のチャレンジをもっと後押ししたい」と、2023年に従来の表彰制度を刷新。「有言挑戦(ヨコク)」に取り組む人やチーム、陰ながら挑戦を支える人にも光を当てる取り組みです。
表彰するのは、成果だけではない
2026年7月10日、4回目となる「THE AWARDS」の表彰式が、新本社「KOKUYO HQ」のあるグラングリーン大阪で開かれました。今年のサブタイトルは「When We Unite」。チーム賞10組、個人賞8名、社長賞1組が選ばれました。
受賞した取り組みは、表彰セレモニーで「生み出した」「広げた」「壊した」という3つのキーワードに分けて紹介されました。新しい価値や仕組みを「生み出した」挑戦だけでなく、その価値を多くの人へ「広げた」仕事や、前進を阻んでいた慣習を「壊した」行動。それぞれの挑戦の形が、この3つのキーワードから見えてきました。
さらに、THE AWARDSを特徴づけるのが、受賞者自身が語る「GREAT JOB STORY」です。伝えるのは、成功した結果だけではありません。何がきっかけで動き始め、どこでつまずき、誰と力を合わせたのか。迷いや衝突も含めて一つの物語にすることで、受賞理由の奥にある判断や行動が見えてきます。
表彰式はライブ配信され、中国・インド・ASEANにも同時中継されました。大阪の会場に集まった受賞者だけでなく、各国・地域で働く社員もその様子を見守ります。受賞の喜びとともに、コクヨが価値を置く挑戦のあり方を、国を越えて共有する時間となりました。
ここからは、2026年の表彰式で披露された4つの「GREAT JOB STORY」を紹介します。
仲間たちとともに受賞の喜びを分かち合いました!
「生み出した」――答えを押しつけず、現場から変化を引き出す
「生み出した」のキーワードで紹介されたのは、課題に向き合い、新たな価値や仕組みを生み出したメンバーです。その象徴的なGREAT JOB STORYとして、中国・東莞工場の組織改革が取り上げられました。
同工場では、生産開始日と納品日を決めた後は、現場の判断で仕事を進めるスタイルが定着していました。ですがそれでは工程全体を把握しづらく、生産や出荷が納期に間に合わないこともあります。日本側のチームは、工程計画を管理するSAPシステムの導入を提案しました。
しかし、現場から返ってきたのは、「なぜ、こんなに手間をかけるのか」「日本とはやり方が違う」という反発の声。日本側にとっては、品質と納期を守るために必要な提案です。とはいえ、日本のやり方を一方的に押し付けることは、メンバーたちの本意ではありませんでした。
そこで、用意した答えを受け入れてもらう進め方をやめ、現場のリーダーから改善策を引き出す方法へ切り替えました。通訳担当者も、言葉を訳すだけではなく、互いの考え方の違いを埋めるために粘り強く対話を重ねます。
やがて現場から、「指定されたライン以外の工程計画もつくろう」という声が自発的に上がるようになりました。ここで生まれたのは、新しい管理の仕組みだけではありません。相手を変えようとする前に、自分たちの働きかけ方を変える。その姿勢が、国を越えて「Unite」を生み、一つのチームをつくりました。
「生み出した」のキーワードで表彰されたメンバーたち
「広げた」――ノートを売る会社から、学び方を提案するブランドへ
「広げた」のGREAT JOB STORYとして紹介されたのは、Campusのリブランディングです。商品をより多く売るという話にとどまらず、ブランドが届けるもの自体を捉え直した挑戦でした。
プロジェクトが掲げたのは、「文具を売る」から「まなびかたを届ける」への転換。その背景には、世界の学生が自分に合う勉強法を見つけられず、悩んでいるという課題がありました。
Campusを単なるノートのブランドにとどめず、一人ひとりが自分らしいまなびかたを見つけるための存在にできないか。チームは、すきま時間の暗記、教科書へのメモ、学習計画、資料の整理といった具体的な場面を洗い出し、文具だからこそできる支え方を探りました。
そこから生まれたのが、複数の文具を組み合わせてまなびかたのアイデアを紹介する「まなびレシピ」です。料理のレシピのように、気になった方法を気軽に試しながら、自分に合うやり方を探せます。
実現までに関わったのは、マーケティングや開発、営業、生産のメンバーだけではありません。考えに共感した販売店の売り場担当者も加わり、Campusの「まなび棚」は915店舗に導入されました。売上は目標比110%に達しています。
ここで評価されたのは、数字だけではありません。ブランドが届ける価値を問い直し、その考えに共感する人を社内外に増やして、「学生に本当に求められているものを届ける」という志のもとに「Unite」したこと。ブランド価値の拡大という新たな一歩を踏み出した、コクヨ史上に残る1ページです。
「広げた」のキーワードで表彰されたメンバーたち
「壊した」――部門の役割を越え、物流を守る
「壊した」のキーワードで紹介されたのは、前へ進むために、従来の役割分担や当たり前を見直した挑戦です 。
そのGREAT JOB STORYで語られたのは、コクヨグループの通販サービス「カウネット」に注文が集中し、未曾有の物流危機に直面した際の対応でした。
物流量は通常の140%まで増え、システムも限界に近づいていきました。サイトが停止すれば、注文を受けることも商品を届けることもできません。担当チームは、アプリの改修、サーバーの緊急増強、販促セールの中止と、考えられる手を次々に打ちます。
一度は持ち直しても、さらに多くの注文が入る。対策を重ねても状況は好転せず、先の見えない対応が続きました。
転機となったのは、カウネットに関わる各部門が、それぞれの担当範囲を越えて動き始めたことです。チームは1日あたりの注文数に上限を設けると決断。短期的に売上を伸ばすことより、必要な商品を継続して届けることを優先しました。人手が足りない物流現場には、400人を超えるグループ社員が応援に駆け付けました。
システム、販売、物流。それぞれに異なる事情を抱えていても、「物流を止めない」という思いは一つ。部署や役割の壁を壊して「Unite」を生み、コクヨグループを一つにつなげたのです。
「壊した」のキーワードで表彰されたメンバーたち
社長賞――同じ未来像が、三者のこだわりを一つに
「生み出した」「広げた」「壊した」の3つのキーワードに沿った紹介に続き、社長賞が発表されました。受賞したのは、コクヨのWebサイトを全面的にリニューアルしたチーム。4つ目のGREAT JOB STORYとして、プロジェクトの舞台裏が紹介されました。
旧サイトは、事業やグループ会社によって目的も表現も異なり、コクヨ全体の姿が伝わりにくい状態でした。プロジェクトの出発点で外部パートナーから投げかけられたのは、「このホームページは0点です」という厳しい言葉。そこから3年にわたる見直しが始まります。
プロジェクトに参加したのは、デザインを担うパートナー、システムを担うパートナー、そしてコクヨのメンバーです。コクヨとして何を伝えるのか。デザインの質をどこまで追求するのか。システムで何を実現できるのか。それぞれの立場で高い水準を求めるほど、意見の調整は難しくなっていきました。
空気が変わったのは、最初のサイトデザインが形になったときです。
「今、ワクワクしている!」
「コクヨらしさって、こういうことか」
積み重ねてきた議論が目に見える形になり、ようやく目指す先を全員で共有できた瞬間でした。
2025年10月に新しいWebサイトが公開されると、閲覧数はリニューアル前の150万回から270万回へ増加。滞在時間は125%、総ユーザー数は180%となりました。
「Unite」を生んだ起点は、全員が同じ未来を描き始めたこと。サイトが一つになるとともに、メンバーもチームコクヨとして一つになった瞬間でした。
称える行為が、次の挑戦の基準になる
表彰式の最後、コクヨ代表執行役社長の黒田英邦は、受賞した取り組みをこう振り返りました。
「一人から始まったチャレンジだとしても、多くの人たちの共感を勝ち取りながら前進した結果だと実感しています。やってみて、失敗してもまた新しいやり方を探す。共感を勝ち取るためには、これを続けることが大切です」
創業当時から事業も働き方も大きく変わってきたコクヨ。その歩みの背景には、お客様や社会、仲間のために、新しい取り組みへ協力して向き合い続けてきた歴史があると黒田は話します。そのうえで、日本だけでなくグローバルの仲間とも力を合わせて前進していきたいと、全世界の社員に呼びかけました。
企業文化は、理念を掲げるだけでは根づきません。何を称え、その過程をどう語り継ぐのか。その選択が、「次は自分も動いてみよう」と思える空気をつくります。
THE AWARDSが示しているのは、完成された成功だけが表彰に値するのではないということ。課題に気づき、試し、行き詰まり、周囲の共感を得ながら前へ進んだ軌跡に光を当てる。その歩みを国や地域を越えて共有することが、次の挑戦を後押しし、コクヨらしい文化をつないでいきます。