キャンパス生誕50年。 ブランド刷新に込めたメッセージ
コクヨの挑戦「ヨコク」を描く社員たち。
今回は、ノートでおなじみのキャンパスのリブランディングを推進するメンバーのヨコク「自分らしい“まなびかた”が見つかるアイデアを世界中に届けます!?」に込めた想いに迫ります。
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INDEX
Profile
藤谷 慎吾(ふじや・しんご)
グローバルステーショナリー事業本部 グローバルマーケティング部ブランド戦略グループ(取材時)
堤 沙也佳(つつみ・さやか)
グローバルステーショナリー事業本部 グローバルマーケティング部ブランド戦略グループ
キャンパスが“まなびかた”に踏み出す理由
―2025年に発売50周年を迎えたキャンパスノートをはじめとする<Campus>ですが、ノートの枠を越え“まなびかた”を支えるブランドへ進化しようとしています。その背景を教えてください。
堤:コクヨは、2030年にアジアNo.1、長期的にはグローバルNo.1ブランドを目指す方針を掲げています(*)。その中でステーショナリー事業では、キャンパスをノートに留めず、“まなびかた”そのものを支えるブランドへ進化させたいと考えています。
加えて、日本ではノートの使用量が減少傾向にあり、グローバルでも将来的に同様の流れが起こり得ます。だからこそ、「モノ」だけではなく「やり方=体験やメソッド」も含めて価値を届ける方向へ舵を切りました。
*ターゲットとする市場におけるシェアNo.1
新たな<Campus>ブランドを表現するキービジュアル
藤谷:フィールドワークで繰り返し出てきたのは、「“まなびかた”が分からない」という声でした。例えば、小学校から中学校、中学校から高校に上がる節目で、暗記法や参考書の進め方に不安を抱える生徒が多いんです。キャンパスとしては、紙だけでは届けられない部分を、「“まなびかた”の設計」という形で提案していきたいと考えています。
コクヨが提案する、文具とメソッドを組み合わせた“まなびかた”のアイデア集「まなびレシピ」
―今回のリブランディングで、お二人はそれぞれどんな役割を担っていますか?
堤:私はブランドサブマネージャーとして、ブランド戦略を担当しています。
藤谷:私はクリエイティブディレクターとして、対外発信のクリエイティブ全般を担当しています。例えば、キャンパスロゴの扱い方やパッケージ設計のルールなど、「見え方」の基準づくりが中心です。
キャンパスは2025年に50周年を迎えましたが、クリエイティブディレクターといった役職が正式に置かれたのはおそらく今回が初めてです。責任は重いですが、やり切る覚悟で臨んでいます。
<Campus>のブランドカラー「Campus SKY BLUE」
誠実さを強みに、世界で通用するブランドへ
―国・地域によってまなびの捉え方やキャンパスの認知は異なると思います。各地の状況を教えてください。
堤:直近では日本・ベトナム・中国で調査を行いました。日本はキャンパスノートの信頼と知名度は圧倒的ですが、「他の文具カテゴリをキャンパスで」という発想にはまだ少し距離があります。ベトナムは日本と状況が近く、キャンパスブランドへの信頼は高い一方で、コクヨ自体の認知はそこまで高くありません。中国はコクヨの総合文具ブランドとして認知されている一方で、キャンパスノートへの信頼は日本ほど強くない、という結果でした。
このように国ごとに状況が異なるからこそ、各国に合わせた戦略は必要です。ただ同時に、「一つのブランドとしての見え方」は揃えていきたいと考えています。
―そのうえで、キャンパスが共通して提供できる価値は何だと考えますか?
藤谷:今の時点で一番の武器は「誠実さ」だと思います。変態的なこだわりで、ユーザーのことを真摯に考え抜いてものづくりをしている。その姿勢こそがコクヨらしさだと感じています。今後はそこに“まなびかた”のメソッドを掛け合わせることで、体験価値を高めていきたいです。
堤:今回「リブランディング」と言えるのは、キャンパスが50年、愚直にノートでまなびを支え続けてきた実績があるからです。その土台があるからこそ、“まなびかた”という抽象度の高いテーマを掲げても不自然ではないし、他の文具カテゴリへ広げても「キャンパスならまなびを助けてくれる」と期待してもらえる。これは50年かけて積み上げてきた、コクヨならではの資産だと感じています。
新キャンパスブランドの商品を紹介(一部抜粋)
「決めて終わり」にしないインナーブランディング
―リブランディングを成功させるためには、社内の意識改革も重要だと思います。社内にはどう浸透させていきますか?
堤:正直にお伝えすると、キャンパスはこれまで体系立てたブランディングを十分にやってこなかった面があります。「良いものを作れば売れる」という成功体験が長かったぶん、ブランディングの必要性を社内で腹落ちさせるのは想像以上に難しいです。
最初は「ブランドコンセプト調査って何をするの?」という手探りの状態でした。そこから、見えてきたインサイトや仮説を、開発・企画のメンバーが理解できる言葉に落として、実際のものづくりに活かせる形で渡す。つまり「現場で使える言葉」に翻訳していくことが重要だと思っています。
―浸透を進めるうえで、とくに意識している伝え方や翻訳の工夫はありますか?
堤:私自身、企画・開発寄りの仕事が長かったので、現場が「この抽象度、どう扱えばいいの?」と戸惑う感覚がよく分かります。だからこそ、受け取る側の立場を想像しながら、伝え方や資料の作り方を整えるようにしています。
―グローバルでルールを揃えるとなると、障壁もありそうです。どのような難しさがありますか?
藤谷:日本だけであれば、例えば「このブルーの面にロゴをこのサイズで入れる」といったルールを決めて、関係者に丁寧に共有していくことで回る部分があります。ただ、グローバルでは各国で独自に成長してきた背景があるので、「なぜ今さらこのルールに合わせるのか」という反発は当然出ます。それでも、「世界中どこでも、このブルーを見ればキャンパスを思い出す」状態をつくれないと、ブランディングは成立しません。上司からは「嫌われる覚悟を持ってでも守り切る必要がある」と言われたこともありますが、そのくらいブランドを守るのは重要だと思っています。
キャンパスが生み出したい好奇心と、目指す先
―ここまでの話を踏まえて、お二人にとって「理想的なまなび」とは何でしょうか?
堤:キャンパスとして「この“まなびかた”が唯一の正解です」と言うつもりはありません。大事なのは、自分に合った“まなびかた”を、自分で納得して選べているかどうかです。そうした実感の積み重ねが自信につながり、何かを乗り越えるときの支えになると思っています。
藤谷:人生100年時代、「自分なりの“まなびかた”」を見つけられるかどうかが重要です。自分なりの“まなびかた”で成果を出した経験は、その後の人生で壁に向き合う力になるはずです。
―もし「自分に合った“まなびかた”」が当たり前になったら、どんな世界が実現すると思いますか?
堤:「自分が当たり前にやっていることが、実は強みなんだ」と気づける世界になってほしいなと思います。誰かに「それ教えてほしい」と言われて初めて、自分のやり方が価値だと分かる。そういう気づきが増えれば、「自分にはこんな強みがあったんだ」という発見ができ、未来の選択肢も広がっていくはずです。
―新たなキャンパスブランドが世の中に広まることで、どんな「好奇心」をもたらせると思いますか?
堤:私にとっては「動き続けるための勇気」に近いです。立ち止まらずにあらゆるものに興味を持ち続けて、少しずつでも前に進めている感覚を持てること。キャンパスがその後押しをできたらいいなと思っています。
藤谷:「“まなびかた”にもさまざまな方法があるんだ」と気づく好奇心を生み出せたらいいなと思っています。“まなびかた”の重要性は頭の片隅にあっても、それを変えることで成果や自信がどれだけ変わるかまで意識されていないことが多いと思うんです。料理のレシピやスポーツの練習法のように、「“まなびかた”にも方法がある」と提示できれば、「自分に合った“まなびかた”を探してみよう」という好奇心が生まれると思っています。
―最後に、キャンパスブランドの今後の展望を教えてください。
堤:中期的には、「中高生にとってキャンパスが『まなびのブランド』として認識されること」をまず定着させたいです。強いブランドを構築するためには、ブランドが大切にしたいメッセージを繰り返し伝え続けることと、領域の拡張など新たなチャレンジをすることの両方をバランスよくやっていくことが重要だと考えています。新しいキャンパスブランドへのお客さまの反応をリアルタイムにキャッチしながら、キャンパスブランドをどんどん進化させていきたいです。
藤谷:「まなびのブランド」といっても、学業だけに限る話ではないと思っています。何かを極めたり探究したりするとき、書くこと、整理すること、アウトプットすることは大きな役割を果たします。例えば部活、委員会、探究学習まで。キャンパスが人々の生活に自然に入り込める余地は、まだまだあると考えています。