オフィス空間は
どう生まれる?
若手が語る芝山工場

オフィス空間はどう生まれる?若手が語る芝山工場

オフィスの会議室や執務スペースは、どうつくられるのか。デスクやイスが置かれる前の空間づくりを担うコクヨ芝山工場のものづくりを、若手社員の声から紐解きます。

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Profile

熊倉 僚太郎(くまくら・りょうたろう)

熊倉 僚太郎(くまくら・りょうたろう)

芝山工場 建材設計開発第2グループ

2023年入社。芝山工場で扱う新製品の開発と既存製品の改良設計を担当。仕様検討からコスト算出までの一連の開発業務を担う。

半田 璃々花(はんだ・りりか)

半田 璃々花(はんだ・りりか)

芝山工場 建材設計開発第1グループ

2025年入社。受注間仕切りの設計を担当。レイアウト図面をもとに一連の製作設計業務を担う。

永山 航輝(ながやま・こうき)

永山 航輝(ながやま・こうき)

芝山工場 建材管理グループ

2024年入社。芝山工場で扱う製品の受注から出荷までの一連のプロセス管理業務を担う。

保田 蒼吾(やすだ・そうご)

保田 蒼吾(やすだ・そうご)

芝山工場 建材管理グループ

2025年入社。間仕切りの購買管理・在庫管理・工程管理を担う。

オフィスの土台をつくる、芝山工場の仕事

芝山工場外観

成田国際空港から車で約15分。千葉県に位置する芝山工場は、敷地面積約7万4,000㎡(サッカーコート約10面分)の広さを持つコクヨの生産拠点の一つ

―芝山工場はオフィスづくりの中でどのような役割を担っているのでしょうか?

インタビューに答える熊倉(設計開発担当)

インタビューに答える熊倉(設計開発担当)

熊倉:オフィスというと、デスクやイスを置いて完成するイメージを持たれがちですが、まずは何もない広い空間に、会議室や執務スペース、雑談する場所、食堂など、それぞれに役割を与える必要があります。そのために空間を仕切るのが「間仕切り」です。芝山工場では、主にその間仕切りと収納庫の生産を担っています。

間仕切り①

会議室を形づくる間仕切りの一例。働き方の多様化に伴い、近年ますます需要が高まっています

間仕切り②

オープン空間に置くだけでコミュニケーションの拠点となるパネルシステム『modular wall(モジュラーウォール)』。多様なシーンに合わせてタイプやカラーが選べます

間仕切り③

用途に応じて多彩な空間を演出する可動式間仕切り『PLANNER WALL SHIFT(プランナーウォール シフト)』

WORKPOD FLEX

Web会議や集中作業に適したオフィス向けワークブース『WORKPOD FLEX(ワークポッド フレックス)』も芝山工場の主力商品の一つ

インタビューに答える永山(生産管理担当)

インタビューに答える永山(生産管理担当)

永山:完成したオフィスでは、どうしても家具や内装に目が向きがちですが、その手前には、空間を仕切る=間仕切る工程があります。芝山工場は、そうした“見えにくいけれど欠かせないオフィスづくりの出発点”を支えています。

オーダーメイドの間仕切りが形になるまで

―その出発点の一つと言える「間仕切り」に焦点を当てて伺います。まず、注文を受けてから出荷するまでの流れを教えてください。

永山:まず工場には、レイアウト図や詳細図などが届きます。そこから最初に行うのは、芝山工場内で製作できるかどうかの確認です。例えば樹脂加工が必要なものなどは別の手配が必要になる場合もあります。

その確認が終わると、生産管理担当が工程管理に入ります。いつまでに設計を終えるか、いつ部品を手配するか、いつ製作して出荷するか。工場内では“ロット”という単位で案件を管理していて、案件ごとに必要な情報を整理しながら進めていきます。

―その中で、設計はどのような役割を担っているのでしょうか?

熊倉:設計の仕事をわかりやすく言うと、「完成レイアウトを部品単位に分解して製作指示を出す」仕事です。案件ごとに異なる発注依頼に対して、それを成立させるためには、支柱は何本必要か、パネルの幅は何mmか、補強材をどこに入れるか、色は何色か、などビス1本単位にまで詳細に設計していきます。

永山:必要な情報がそろったら、初めて部品の手配ができます。社内でつくるものもあれば、協力工場に依頼するものもあります。材料をいつ入れて、いつ曲げて、いつ塗装して、というように細かく日程を組み、最終的に必要なものをそろえて出荷します。

―組み立てた状態で出荷されるわけではないのですね。

永山:基本的にはパーツ単位で出荷して、現場で施工会社の方に組み立てていただく形です。ただ、ドア本体のように工場で組み上げた状態で出すものもあります。

芝山工場の間仕切りは、受注の約8割がオーダーメイドです。受注から出荷までは平均で4週間ほど。その間に、製作可否の確認、生産計画、設計、製作といった工程が進んでいきます。規格品をそのまま流すのではなく、案件ごとに必要なものを考え抜いて形にしていく。そこに、芝山工場のものづくりならではの面白さがあります。

間仕切りを構成する部材の一つであるレール加工の様子

レール加工①

①最初は大きな鉄板をカットするところからスタート

レール加工②

②大きな一枚の鉄板を必要なサイズにカット

レール加工③

③ブレーキプレスという機械で鉄板を曲げていく様子

レール加工④

④あらかじめ機械に数値を入力すると、その数値通りに鉄板を折り曲げることが可能。鉄板を機械に設置する作業は人の手で手際よく行います

ロボット溶接の様子

ロボットによる溶接の様子

レール加工の様子を動画で見る

数ミリのズレまで見越す設計の工夫

―工程の中で、読者の方が「そんな工夫があるんだ!」と驚きそうなポイントをぜひ教えてください。

熊倉:間仕切りの面白いところは、床・壁・天井がそれぞれ完全に水平垂直ではないことを前提につくられている点です。実際の現場では、測る場所によって数ミリ単位で寸法差異が発生します。そのような状況においても、パネルを施工した際に綺麗に面が揃うように、支柱側に調整機構を持たせています。

支柱の調整機構を説明する熊倉

間仕切りの模型を用いながら、支柱の調整機構を説明する熊倉

支柱の伸縮機能について説明

支柱を上下に伸縮できる構造にすることで、施工現場で生じる数ミリ単位の高さのズレに対応が可能



永山:しかも、その調整は現場でできるようになっています。工場では部品単位で出荷し、施工時に微調整しながら仕上げていく。完成すると見えなくなる部分ですが、じつはとても大切な工夫です。

―ほかにも、施工しやすさにつながる工夫はありますか?

インタビューに答える半田(設計開発担当)

インタビューに答える半田(設計開発担当)

半田:私が入社して驚いたのは、支柱に“爪で引っかける”構造です。他社ではビスを多く使う構造もありますが、芝山工場では支柱にあらかじめ一定のピッチでスリットを入れていて、施工時に適切なスリットを選んで部材を引っかけられるようになっています。この仕組みがあることで現場での施工がしやすくなっています。

部材を手に支柱のスリット構造を説明する半田

部材を手に支柱のスリット構造を説明する半田

支柱のスリットに取り付ける部材

支柱のスリットに取り付ける部材。爪を引っかけるだけで固定でき、施工現場でも簡単に位置調整が可能



永山:そこは、コクヨの間仕切りの特長でもありますね。コクヨのものは部材点数が比較的少なく、実際に「施工しやすい」と評価いただくことも多いです。

バリ

板金加工では、フチに「バリ」と呼ばれる不要な突起が生じることがあります。製品にした際にそのバリが見えない内側にくるよう設計・加工することで、ケガの防止と見た目の美しさの両立につなげているのも芝山工場が大切にするポイントの一つ

いいものづくりを支える対話と人の力

―オーダーメイドのものづくりだからこそ、大事になることは何でしょうか?仕事をするうえで意識していることを教えてください。

インタビューに答える保田(生産管理担当)

インタビューに答える保田(生産管理担当)

保田:やはり、コミュニケーションは大切にしています。生産管理は、実際にものをつくっている現場の皆さんと日常的にやり取りします。そのため、単に依頼を流すだけではなく、現場の要望を聞きながら、全体として何がベストかを考えるようにしています。

熊倉:設計開発チームは設計のプロではありますが、実際に手を動かすのは工場の製作部の皆さんなので、できるだけ現場に行って直接話すことを大切にしています。「この形状ならもっと作りやすい」とか、「この穴の大きさを揃えたほうが効率がいい」とか、実際にモノを作る人の声を聞くからこそ見えてくる改善点も多いんです。

永山:協力工場の方とも、できるだけ直接話すようにしています。コストや納期の面でも、「もっと良いやり方があれば教えてください」と素直に聞く。そこで得た気づきを、開発側や製造側に返していくことも大事だと思っています。

熊倉:設計、生産管理、製作部、協力工場。それぞれの専門性を持つ人たちが知見を持ち寄って、かたちにしていく。その積み重ねが、芝山工場のオーダーメイドのものづくりを支えているのだと思います。

こだわり抜いたものづくりの担い手

―ものづくりの仕事に興味を持っていても、専門知識がないと難しいのではと感じる方もいると思います。実際のところはいかがでしょうか?

永山:工場の現場で働く製作部門の皆さんは、地元の方や高校卒業後に入社した方も多いです。最初からものづくりを専門的に学んできた人ばかりではなく、入社してから知識や経験を身に付けていく人がほとんどですね。

熊倉:一方で、生産管理や設計で働く中堅の方々には、実際に工場の製作現場を経験してきた方が多いです。ものづくりの感覚を持ちながら各部署のマネジメントをしているところは、芝山工場の強みの一つだと思います。また、若手が工場に配属されるケースはここ1~2年で増えてきました。そうした背景もあり、新しい視点が生まれやすい環境になってきていると感じます。

若手が見つめる、芝山工場のこれから

インタビューカット

―日々の仕事の中で、手応えを感じるのはどんな瞬間ですか?あわせて、これから挑戦したいことも教えてください。

半田:自分が時間をかけて描いた図面が、実際に現場で納まったと聞けたときはうれしく、達成感を感じます。実際に現場を見に行けていない案件も多いですが、これからは、工場全体と納品現場の距離感がもっと近づくような仕掛けづくりをしていきたいです。

保田:僕は「ものづくりから逃げない」ことを大事にしていきたいです。文系出身で、何かをつくることから距離を置いてきた自分が、今はものづくりのど真ん中にいます。だからこそ、逃げずに学び、経験を重ね、現場の方たちと対等に意見を交わせるようになりたいです。

永山:今後は、工場全体の改善活動にもっと関わっていきたいです。生産管理は多くの部署と関わるので、工場全体を広く見る機会が多いんです。その中で得た気づきを発信しながら、よりよい工場づくりにつなげていけたらと思っています。また、今後もし営業や企画の立場になったとしても、工場でものづくりを経験した視点を活かして、上流と現場の距離を縮められる存在になれたらと思っています。

熊倉:個人の目標は、ものづくりのプロフェッショナルになることです。設計の知識にとどまらず、生産管理や品質管理、製作部、さらには収納庫の業務についても学び、まずは芝山工場を幅広く理解できる存在を目指します。

また、2025年に私たちの事業本部の名称は、ワークプレイス事業本部から“グローバル”ワークプレイス事業本部に変わりました。今後、海外への納品が増加していくなかでも、さまざまな変化に対応し、進化し続ける工場でありたいと考えています。