HOWS DESIGN

Vol.38 CASE

組織貢献や成長を実感できる仕事の創出にこだわる。「障がい者業務創出BPOサービス」

掲載日 2026.04.15

<ALT始まり>インタビュイーの紺色のジャケットを着た西村さんとベージュ色のジャケットを着た佐藤さんが、白いカウンターを挟んで立っている<ALT終わり>

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを提供するコクヨ&パートナーズ株式会社には、多様な人材が自分らしく活躍できる組織づくりを支援するチーム「障がい者業務創出BPOサービス」があります。今回は担当者のおふたりに、障がい者雇用の現在と今後の展望についてお聞きしました。

Interviewee

  • 西村充広(にしむら みちひろ)

    コクヨ&パートナーズ(株)プロジェクト推進室

  • 佐藤洋介(さとう ようすけ)

    コクヨ&パートナーズ(株)プロジェクト推進室

「法定雇用率」と「業務不足」 企業の葛藤に寄り添う

――「障がい者業務創出BPOサービス」とは、具体的にどんなサービスなのでしょうか?

西村:一言でいうと、企業で雇用されている障がい者が取り組む仕事をつくり出すこと。障害者雇用率制度によって常用労働者40人以上の民間企業は従業員数に対して2.5%の障がい者の雇用が義務付けられており、2026年7月からはさらに常用労働者37.5人以上・2.7%に拡大される予定です。従業員を1万人以上抱えるようなエンタープライズ企業では数百名単位で障がい者を雇用することになります。そこで生じる「任せる仕事が少ない、足りない」という課題に対して、業務創出の提案からフォローまで担っています。

申し込みフォームの定着でデータ入力業務がなくなるなど、DXやRPA、AIの進化でこれまで障がい者に委託していた定番業務が代替されつつあります。そこに、私達がBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業で培ってきたノウハウを生かし、「この業務は切り出せるのではないか」「こんな業務を行うのはどうか」と提案を行っています。

<ALT始まり>障がい者業務創出BPOサービスの概要を説明している画像<ALT終わり>
――コクヨ&パートナーズが障がい者業務創出の領域に取り組み始めたきっかけや背景として、どんなことがあったのですか?

西村:コクヨ&パートナーズが2016年に社内発ベンチャーのような形で立ち上がり(BPO事業自体は更にその10年前から開始)、徐々に事業成長していくなかで、新しい事業の柱を考えていきたい、社会課題の解決に資する事業にも取り組んでいきたいと話し始めたのがきっかけです。また、事実として、2024年4月に法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられた際、「今後はこの業務を障がい者の方に担当してもらうことになった」と契約を打ち切られる事例がBPO業界・人材派遣業界で散見されました。ならば自社で障がい者業務創出に取り組もうと、受け身ではなく攻めていくことにしたのです。

<ALT始まり>ソファに座っている紺色のジャケットを着た西村さん。テーブルの上のパソコンの手前で両手を組んでいる。<ALT終わり>

佐藤:ベテラン社員の方々が勘や経験で取り組んでいたような属人化された業務も細分化・標準化して、知識や経験がない人でもできるようにアレンジするのがBPOです。そこに障がいの種別や個人の特性などに合わせてマニュアルやフローを整える必要があります。例えば知的障がいのある方が多く活躍する職場では、マニュアルの表現に馴染みやすい表記を選んだりと、「分かりやすさ・伝わりやすさ」を追求した運用などを行っています。
また、ここ数年、企業で働く精神障がい者の方々が増えています。様々な要因で体調に波が出る場合もあるため、業務量や期限の設定は特に意識する必要があると感じています。

<ALT始まり>ベージュ色のジャケットを着て、眼鏡をかけている佐藤さんが、質問に対し、手振りを交えて回答している。<ALT終わり>

やりがいを得られる仕事を創出することが、キャリアアップや自己肯定感の向上にもつながる

――障がい者への業務創出として、特性に合わせた業務設計のほかに、意識していることや工夫していることは?

西村:私たちは「組織への貢献実感が持てる業務を創出する」ことにこだわっています。まったく事業に関係のない業務を創出してやってもらうケースもあると聞きますが、それでは働きがいや貢献意識を感じにくいと考えています。自分もこの組織体の仕事をしていると感じられ、それが働きがいや待遇向上にもつながればと考えています。

佐藤:「今のままの仕事がいい」という安定志向の方ももちろんいらっしゃいますが、各種調査から「幅広い業務の経験や能力を身に着けたい」「周囲の人や社会の役に立ちたい」「より高い収入を得たい」といったキャリアアップや組織貢献への意向を持つ人も数多くいることがわかります。一方で障がい者のキャリアアップや昇給制度がある企業はまだまだ少ないです。

BPOで仕事を細分化して難易度や優先度のグラデーションをつけることで、レベルの高い業務や難しい作業に取り組んでいることが見える化され、それがひいては昇給の判断材料や得意に合わせて領域を広げるサポートになればと考えています。やりがいを持って仕事に取り組めることは、自己肯定感の向上にもつながりますし。

そんな風に、直接のクライアント先である企業の人事や総務担当者だけでなく、その“一歩先”にいる実際に作業を行う障がい者の方々の両方に貢献できたらと思っています。

西村:そのためには現場で働く人が障がい者をよく知らない、わからないという状態を解消することが大切です。例えばオフィスコンシェルジュというサービスでは、オフィスを巡回してホワイトボード等のオフィス備品のメンテナンスや備品の補充、会議室のケーブル・コード類の破損チェック、来客エリアの整理整頓など、オフィスを働きやすくするためのインフラを整える作業を行います。障がい者が同じオフィスの中で作業している様子が自然に目に入ってきて「同じ空間で働いている」と実感できることが、組織にいい影響を与えているという声をよく耳にします。

――障がい者業務創出の取り組みを行う競合と比較して、コクヨならではの強みや特徴はありますか?

佐藤:コクヨとしてオフィスを働きやすい場所にするための当たり前の気づきと、属人化されていて言葉にしにくい業務を標準化して可視化するBPOの知見の両方を活かすことができている点が我々の強みだと思います。そのためにも実際に何度も現場に足を運んで、実際の作業を見せてもらうなど、かなり泥臭く調査するようにしています。

西村:「コクヨKハート」(障がい者雇用を目的としたコクヨの特例子会社)と結びつきが強いことも、強みのひとつですね。BPOで業務連携することも多いので、苦労話も含めた相談・情報交換ができていると思います。
業務創出・切り出しでは、先入観を持たず、「難しい業務かもしれないけれど、やれる前提で検討しましょう」というスタンスで考えるようにしています。どう細分化、標準化すればできるだろうと考えられるのは、これまでKハートと情報交換しながら一緒に仕事をしてきた実績のおかげです。

また、コクヨには障がい者雇用が法定で必須になるよりかなり以前の1940年から障がい者採用に取り組み、協働してきた歴史と文化、DNAがあります。そのため、障がい者がオフィスで働き、組織に貢献している現場を実際に見てイメージをつかんでもらうため、オフィスに見学に来ていただくこともあります。

業務創出と採用支援の両輪で、企業と障がい者をサポートしたい

<ALT始まり>左に西村さん、右に佐藤さんが座り、明るい表情で、今後挑戦していきたいことを話している。<ALT終わり>
――今後、挑戦していきたいテーマや展望を教えてください。

佐藤:企業側の困りごととして、雇用した障がい者への業務創出に加えて、採用そのものの課題を抱えています。採用面接に同席してほしいなどの相談を受けることもあるので、今後はRPO(リクルート・プロセス・アウトソーシング)の領域にも挑戦していきたいと考えています。私自身は採用畑出身で、障がい者採用コンサル支援などもやってきたので、その経験を活かしていけたらと考えています。ただ、障がい者業務創出BPOは立ち上げたばかりなので、採用支援まで領域を広げるにはリソースがまだまだ不足しているという課題はありますが(笑)

障がい者採用の求人広告では、オープン採用、要するに何をしてもらうのか業務内容が不明確な採用が多いという課題があります。「受け入れる準備はできていないけれどとりあえず入ってきてください」というメッセージを発してしまうような不誠実な採用をなくしていきたい。それはBPOで解決できるはずです。
障がい者雇用率が義務化される一方で、特に都市部ではなかなか採用できないという課題もあります。依頼する業務を創出し、必要なスキルを明示するジョブ型の採用をかけられるようになれば、差別化にもつながりますし、ミスマッチも減るのではないかと考えています。

西村:DXやAIの台頭で業務が減りつつあるとお話しましたが、オフィスのインフラを整えるといった身体性を伴うファシリティマネジメントの入り口のような仕事は当分なくならないと見ています。むしろ、AIを仕事を奪うものと見るのではなく、能力を拡張させるパートナーとして使えるといいなと思っています。それによって組織の生産性向上に貢献できるようになり、キャリアアップにもつながっていく未来を描いています。

待遇や環境、やりがい、将来の見通しなどに満足できそうだと胸を張れる仕事、組織の役に立ち、自信がつく仕事をつくること。そうした仕事に、当事者意識を持って、取り組み続けたいと考えています。

取材日:2026.3.13
執筆:中原絵里子
撮影:梅本雄三
編集:HOWS DESIGNチーム

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