働き方改革の目的と企業の課題ー多様な働き方を「選択できる」環境を作るには?

働き方改革の目的と企業の課題ー多様な働き方を「選択できる」環境を作るには?

企業が働き方改革を推進する際、制度の導入のみが目的となってしまうと、生産性や従業員エンゲージメントの低下等の新たな問題がしばしば起こります。この記事では、働き方改革の概要と目的、推進するメリットや企業が抱える課題等を解説し、働き方改革を組織に定着させるカギとなる組織文化やオフィスの重要性について紹介します。

目次 (読了時間:約5分)
近年、多くの企業が働き方改革に取り組んでいます。働き方改革を行っている企業は、労働時間の削減や働く環境の改善など一定の成果を得る一方で、業務負荷の偏りや従業員エンゲージメントの低下など、新たな課題にも直面するようになりました。

働き方改革を「社員の働きやすさ」と「企業価値の向上」の両方につなげていくためには、どのような視点が必要なのでしょうか。この記事では、日本における働き方改革の現在地と、企業が直面している課題を解決するヒントについて、コクヨの実践事例を交えながらお伝えしていきます。

1.働き方改革とは?

1.働き方改革とは?

働き方改革とはそもそも何のために、誰がどうやって進めるべきものなのでしょうか。まずは、働き方改革の目的やポイントを確認しておきましょう。

働き方改革の目的と背景

働き方改革の目的について、厚生労働省は以下のように説明しています。

「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。
 日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要です。
 働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。

出典:
<PDF>働き方改革関連法のあらまし (改正労働基準法編) P.2
2020年3月 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

政府が働き方改革を推進する背景には、急速に進む日本の少子高齢化と生産人口の減少があります。社会を維持していくためには、長時間労働など従来の労働慣行を見直し、子育て中の女性や高齢者など多様な人材の就業機会を拡大する必要があったのです。また、正社員と非正規雇用労働者など、雇用形態による給与などの処遇格差も大きな課題でした。

2010年代の半ばから政府主導で議論が進み、2018年6月に働き方改革関連法が成立。2019年4月から改正後の労働基準法が順次施行されたことにより、企業には時間外労働の上限規制など罰則付きの義務や、フレックスタイム制の拡充などに対する努力義務が生じました。

働き方改革の主なポイント

働き方改革関連法にもとづいて企業が取り組みを進める際に、必ず押さえておくべきルールは以下の3つです。

1.年次有給休暇の時季指定
法定の年次有給休暇付与日数が10日以上のすべての労働者に対して毎年5日、確実に年次有給休暇を取得させる必要があります。

2.時間外労働の上限制限
残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。

3.同一労働同一賃金
同一企業で働く正社員と非正規雇用労働者との間に、不合理な待遇差を設けることは禁止されています。

厚生労働省の特設サイトで詳しく解説されているので、チェックしてみてください。

■参考
働き方改革推進支援センター | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省

今後の関連法改正の見通し(2026年通常国会は見送り)

働き方改革関連法の成立後も、厚生労働省の有識者会議「労働基準関係法制研究会」において、労働基準法等の見直しに関する継続的な議論が行われています。同研究会がまとめ、2025年1月に公表された報告書に基づいて、労働基準法のさらなる大幅改正が予想されていましたが、2026年通常国会での法案提出は見送られました。

現在、以下のようなトピックが挙がっており、2026年夏以降に厚生労働省の労働政策審議会での議論が予定されています。

・連続勤務の上限規制(2週間以上の連続勤務の禁止)
・勤務間インターバル制度の義務化(終業から次の始業までに最低11時間の休息)
・「つながらない権利」のガイドライン策定 など

法改正がいつからの施行になるかなど詳細は見えない状況ですが、企業は、将来的な法改正を見越して対策を行いつつ、政府の動きを注視しておく必要があります。
※2026年8月時点の情報です

■参考
「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表します|厚生労働省
日本成長戦略本部/日本成長戦略会議|内閣官房ホームページ

働き方改革の推進をサポートする仕組み

企業が働き方改革を進める際には、各種制度の整備や従業員への周知に向けて、専門知識や人的リソース、予算の確保が必要になります。とくに中小企業や小規模事業者には、厚生労働省による各種助成金や無料相談窓口、各種ツールなど、国によるサポートが充実しています。働き方改革特設サイトをチェックしてみてください。

2.働き方改革を推進するメリット・デメリット

2.働き方改革を推進するメリット・デメリット

政府主導で議論や法改正が進められている働き方改革ですが、企業にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。働き方改革を推進している企業が直面している現状の課題も含めて、確認しておきましょう。

メリット:働き方の多様化による企業の魅力向上

企業が法律に基づいて労働時間や休暇、賃金などの制度を整えることで、社会から企業に対する信頼性の向上が期待できます。また、フレックス制度やテレワークなど、働き手の多様な働き方のニーズに応える体制を整えることにより、採用や離職防止に対するポジティブな影響も期待できます。

働き方改革によって企業の魅力を向上することが、人材の採用や雇用の維持につながり、企業の存続と成長を可能にしていくのです。

デメリット:推進の過程で直面するさまざまな負担や課題

企業にとって働き方改革はメリットだけではなく、一時的な負担増などのデメリットもあります。また、制度を整えても組織に浸透しないなど、改革がうまく進まない場合もあります。働き方改革において企業が直面する主な課題は以下のとおりです。

一時的なコストの増加や業務効率の低下

働き方改革を推進する上でのデメリットは、各種制度の整備や定着に向けた一時的なコスト増や、従業員一人あたりの労働時間短縮による人手不足などです。しかし、長期的には、企業の魅力向上による採用コストの削減や、働きやすい環境整備による生産性向上などの効果によって、プラスに転じていくことは可能だと考えられます。

働き方の制度と組織文化のミスマッチ

勤務時間や休暇などの制度を整えても、組織に染みついた働き方の文化が変わらなければ、なかなか実効性のあるものにはなりません。現場の実態を無視して会社側が制度を強制すれば、管理職など一部の従業員への過剰な負担や、隠れ残業の横行などの歪みにつながる恐れもあります。

多様な働き方とオフィス環境のアンマッチ

フレックス制度など柔軟な勤務制度の拡充と合わせて、在宅勤務などのテレワークやABW(Activity Based Working)など、働く「場所」をワーカー自身が選べる制度を取り入れたりする企業が増えています。しかし、制度だけ整えてもオフィス環境や組織の文化が柔軟な勤務に合っていないと、制度がうまく機能しない場合もあります。

例)
・オフィス内にオンラインミーティングに適したスペースが少ない
・出社しても座席や会議室が足りないことがある
フリーアドレスなのに座席周りに私物を置きっぱなしにするなど、固定席のように使われている
・リモートワークが認められているが、セキュリティ上の制約が多くて不便なためあまり使われていない

従業員エンゲージメントの低下

柔軟な勤務制度の導入により、働く人それぞれのニーズに合わせてバラバラの勤務時間や場所で働くようになると、ワーカーが上司や同僚と対面でコミュニケーションする機会が減っていきます。コミュニケーションのハードルが上がると、ちょっとした雑談や相談をしづらくなり、孤独感や組織への不満につながっていく場合があります。

3.多様な働き方を「選択できる」職場環境づくりのヒント

ここまで見てきたように、働き方改革は企業にとってメリットがある一方で、各種制度の導入や推進の過程であらたな課題に直面する場合もあります。多様な従業員がそれぞれに合った働き方を選択できる職場環境をつくり、それを企業価値の向上につなげていくためには、何が必要なのでしょうか。

働き方に関する各種制度をきちんと機能させていくためには、経営側と従業員、双方が「働き方」に関する意識を変える「組織文化変革」と、新しい働き方に適した環境を整備する「オフィス改革」を同時に進めていくのがおすすめです。以下、詳しく見ていきましょう。

3.多様な働き方を「選択できる」職場環境づくりのヒント

働き方改革×組織文化変革

制度を上から押し付けるだけでは、従業員側には納得感がありません。働き方改革によってどのような状態を目指していきたいのかを明確にし、トップがしっかりとメッセージを発信するとともに、働き方改革によるポジティブな効果を従業員自身が実感できるような機会を作ることも大切です。こういった取り組みが、組織の「働き方」に関する文化の変化につながります。

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組織文化変革は企業の成長をどう後押しする?〈前編〉 | コクヨのMANA-Biz

こちらの資料では、コクヨが考える働き方変革、コンサルティング業務やプロジェクトマネジメント業務導入のメリットをご紹介しています。

働き方改革×オフィス改革

オフィス改革とは、働き方の変化に合わせてオフィスのデザインやレイアウトを改善するとともに、目指す働き方の実現に向けて、意識の変革も合わせて行う取り組みです。2023年に内閣人事局で実施された取り組みをもとに国の各省庁でモデル事業が進んでおり、注目を集めています。オフィス環境の整備によって、社員の働きやすさを向上するとともに、生産性や創造性の向上も目指す点がポイントです。

柔軟な働き方を可能にする勤務制度の導入とあわせてオフィス改革を実施することで、働き方改革の効果を高めることが期待できます。オフィス移転やオフィスリニューアルのタイミングに合わせて、働き方改革を推進するのも、同様に効果的です。

■参考
オフィス改革 | 内閣官房

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4.働き方改革の企業事例【コクヨ】

最後に、働き方改革とあわせて「組織文化変革」と「オフィス改革」を行っているコクヨグループの取り組み事例をご紹介します。

コクヨの取り組みの根底には「事業活動の基盤となるのは従業員のクリエイティビティである」という考え方があります。働き方改革は、事業活動の基盤を守り、強化するための取り組みと言ってもよいでしょう。

社員のウェルビーイングと会社の成長をリンクさせる

コクヨグループでは、働き方や休み方に関する制度の整備にとどまらず、多様な社員が自分らしく活き活きと働ける環境づくりを実践し、ウェルビーイングの向上とイノベーションの創出を目指しています。

コクヨ式ハイブリッドワーク

自分らしい働き方・学び方・暮らし方のバランスが整っている状態を「Life Based Working」と定義付け、それぞれのライフスタイルに適した出社・テレワークのバランスを個人が選択した上で、上司との対話を通じて個人とチームにとって最適な働き方を決定しています。

マネジメントの価値観変革

社員の「可処分時間」の創出に向けて、「業務フォローアップ」「1on1ミーティング」「休み方の支援」の3つのテーマでマネジメント改革に取り組んでいます。コクヨらしい1on1のあり方を定義し、コミュニケーションを通じて働き方・時間の使い方の変化につなげています。

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多様な働き方にフィットする、開かれたオフィスを作る

コクヨの自社オフィス「The CAMPUS」は、最適な場所や時間を自由に選択できるABW(Activity Based Working)という働き方を効率的に実施できるよう、集中ブースやリフレッシュスペース、コラボレーションエリアなど、業務におけるさまざまなアクティビティに応じた機能を各フロアに持たせています。また、公園や公共施設のように一般の人が立ち寄れるスペースも設けています。

ハイスペックな設備が揃い、多様な人が集まるオフィスならではの新しい体験ができる場所としてオフィスを位置付け、業務効率だけでなく、社員のワークとライフの充実や、クリエイティビティの向上につなげています。

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The CAMPUS

5.働き方改革成功のカギは、組織文化とオフィスにあり

働き方改革は、働く時間や休暇に関する制度の問題だと捉えられがちですが、そもそもの目的は、多様な人が働きやすい環境を選べるようにすることです。そのためには、勤務制度の変更や導入だけでなく、組織文化の変革やオフィス改革も同時に進めることが大切なのです。

組織の課題や目指す姿は、企業によってそれぞれ異なるため、まずは自社の社員の希望や課題をヒアリングするところから始めてみてはいかがでしょうか。コクヨでは、働き方のデザインを通じてお客様の事業成長を後押しするお手伝いをしています。働き方改革に課題を感じたら、ぜひご相談ください。

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