書くことは頭にあるアイデアをかたちにする第一歩|プロダクトデザイナー・鈴木元

書くことは頭にあるアイデアをかたちにする第一歩|プロダクトデザイナー・鈴木元

“思考を整理する”コクヨこだわりの筆記具ブランド「KOKUYO WP」を使い、書くことを実践している方々に、その魅力と可能性についてお話を伺います。

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「思考を整理する」というコンセプトのもと、2023年に誕生したコクヨこだわりの筆記具ブランド「KOKUYO WP」。書き手の動きにあわせて表情を変える筆致が特長の“ファインライター”というカテゴリーで、「書くこと」そのものに夢中になれるペンとして、多くのファンに親しまれています。9月2日には、既存のシルバー、ブラックに加えてディープグリーン、ディープブルー、ディープレッドのという3色を加えて、バージョンアップしたばかり。

そんな「KOKUYO WP」を日頃から使って「書くこと」を実践している方々に、書くことの魅力と可能性について、お話を伺っていきます。今回登場するのは、プロダクトデザイナーの鈴木元さん。プロダクトやデザインを生み出すという仕事のなかで、書くことはどのような役割を果たすのか。生活と仕事が混ざり合う自宅兼事務所にて、お話を伺いました。

Profile

鈴木元さん

鈴木元さん

IDEOのロンドン、ボストンオフィスを経てGEN SUZUKI STUDIOを設立。スタジオを自宅に併設し、生活とデザインを隔てないアプローチで、国内外の企業と協業している。GERMAN DESIGN AWARD金賞、米IDEA賞金賞、クーパーヒューイット国立デザイン美術館永久収蔵など受賞多数。金沢美術工芸大学客員教授。2026年グッドデザイン賞審査副委員長。英Royal College of Art修了。

書くことで頭のなかのイメージを外に出す

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──日常のどのようなときに、どんなことを書くのでしょうか?

鈴木:デザインのことをつねに考えているので、紙になにかを書くということは日常的にあります。書くものはたいていアナログですね。タブレットもありますが、ほとんど使っていません。スケッチとメモ書きのノートを分けていた時期もありましたが、最近はひとつのノートに、スケッチもメモもどちらも書くようになりました。事務所のパソコンの横にはミスプリントした用紙を貯めていて、思いついたことをさっと書いてスタッフに共有するなど、書くことがコミュニケーションのための手段としても機能しています。

──書くことにおいて、大事にしていることはありますか?

鈴木:僕の場合は、手を動かして書きながら考えているというわけではないように思います。具体的なアイデアを思いついたときに、思いついたものをそのまま書いているようなイメージです。それに、うまく書こうとすると、スケッチそのものに気を取られてしまうので、あまりうまく書こうともしない。スケッチしたものをプレゼンで使うわけでもないですし、誰かを説得するために使うわけでもないので、頭に浮かんだものを自分で見直すために書いているんだと思います。

──アウトプットとして「書くこと」があると。

鈴木:デザインでは書くことに限らず、頭のなかで考えたことを外に出す行為が大事だと思います。アイデアを具体化して、客観化するために、仕事においてもプロダクトの試作を日常的にやっていますが、書くことは一番簡単な試作とも言えると思います。外に出したものを見れば、それが良いか悪いかがわかるので、次にどうすればいいかがおのずと見えてくる。そうやって完成形に近づけていく、その最初のステップが書くということです。

僕は画家ではないですし、書くということはあくまで客観化するためのツールでしかない。だから、頭のなかをかたちにするためのペンには、思ったとおりに気持ちよく動いてほしいんです。その点、KOKUYO WPは書いているときに頭の中にあるイメージの繊細なニュアンスを、意識しなくてもきちんと残すことができる。力が入ったところは線が太くなったりと、自然と線に強弱が出るところがいいですね。

アイデアがかたちになるまで

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──プロダクトデザインというお仕事において、どのようにしてイメージがかたちになっていくのでしょうか。

鈴木:プロダクトデザインというのものは、考えて考えて頭のなかから捻り出すようなものではないと思います。生活のなかにふと見えてくるイメージをかたちにしていく。おそらく、いいと思う感触は誰の頭のなかにもあって、それを代表してかたちにしているのがデザイナーという仕事だと思います。

具体的には、まずは要件を踏まえつつ、とにかくかたちにしてみる。それを見ると問題点が見えてくるので、すぐに改良をする。それをひたすら繰り返します。答えはすでにそこにあるんです。チームでやる場合は、頭のなかにあるイメージを手で書いてスタッフに伝えて、ディテールを整えていきます。

──書くことは頭のなかを可視化する行為なわけですね。

鈴木:はい。でも頭の中のイメージをあまり信じているわけではないんです。だから、それを外に出すということが大切。書くことは外に出すことだと思います。それによって客観化することができるし、冷静に見ることができる。脳みそって目の後ろにあるじゃないですか。だからそのイメージを直接見ることができないんですよね。それを目の前に持ってくるための手段が書くことであったり、試作をつくることなのかなと思います。出てくることでそれを見ながら客観的に話ができる。

暮らしのなかでデザインを考える

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──生活と密接したご自宅内の仕事場でお仕事をされていると思いますが、どのような理由があるのでしょうか?

鈴木:普段からプロダクトの試作品をつくっては、日常のなかで使うようにしています。プロダクトって生活のなかで使うものが多いわけですが、そのものの良さは単体ではなく、隣にあるものとか、持ち運ぶときの状態とか、そういう周囲との関係性のなかでこそ立ち上がってくる。だから、生活のなかでふと使ってみてどう感じるのか。そういう、つくり手ではないすこし引いた目を日頃から持つようにしています。

デジタルとフィジカルなプロダクトの一番の違いは、電源をオフにしても消えないということ。デジタルツールの場合は電源を切るとなくなってしまうので、使っているときのことだけ考えていればいいのですが、フィジカルなものは使っていないときでも、ずっと目の端にある。だから、デザインをするときにも、目の端でデザインしなければいけません。

──ペンについても、まさに目の端にある時間がありますね。

鈴木:ペンを使うときも、ペンそのものは見ていないわけじゃないですか。僕たちはプロダクトのデザインを追求しているわけですが、使う人は別にそんなことを気にせずに使っている。でも実は、気にせずに使えるということはすごいことなんです。それを実現するためには、持ち歩くときや、書いていない時の存在など、生活全体のなかでデザインを考えることが重要なんです。

──鈴木さんの目線から、KOKUYO WPのデザインはいかがでしたか?

鈴木:あくまでもペンらしいのが良いですね。特別じゃないからこそ、名脇役になれる。僕がつくるプロダクトも、平坦な日常のなかで淡々と使うものが多いのですが、そういうもののデザインは、使うときにすっと出てきて、使わないときにはすっと引いてくれるのがいい。まさに名脇役です。こういう脇役をつくるのって難しいんですよ。かなり繊細にデザインしなければいけない。KOKUYO WPはちょうどよくおさまった感じがしますが、それってすごく難しくて、よくできているなと感じました。

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