オフィスの食堂、どう作る?ROIを高める空間設計のポイント【事例あり】

オフィスの「食」に対する社員と企業のニーズは、コロナ禍の出社抑制とその後の職場回帰を経て大きく変化しました。この記事ではオフィスの食堂空間の構築やリニューアルを検討しているご担当者向けに、オフィスの「食」の現状と、社員食堂設置のメリット・デメリット、ROIを高める食堂空間設計のポイントを、企業事例入りでお伝えします。

オフィスの食堂、どう作る?ROIを高める空間設計のポイント【事例あり】01

コクヨHQオフィス

目次(読了時間:約5分)
オフィスにおける「食」のあり方は、コロナ禍とその後のオフィス回帰を経て、大きく変化しました。近年、オフィスの移転やリニューアル、福利厚生の見直しなどを機に、食堂の設置など「食」に関する新たなスペースや制度の導入を検討する企業が増えてきています。

いま、働く人と企業の「食」に関するニーズはどう変化し、オフィスの食堂空間には何が求められているのでしょうか。この記事では、オフィスの「食」に関する現状と、投資対効果(ROI)を最大化する食堂空間の作り方について解説していきます。

1.オフィスの「食」へのニーズは変化している

リモートワークやフレックスタイム制など、働き方の多様化が進み、働くことに対する個人の価値観も多様化している現代においては「お昼時に一斉に休憩を取る」「同僚と一緒にランチへ行く」といった一昔前の常識も、決して当たり前ではなくなりました。

そのことにより、「社員が食事をとる」という機能のみに特化して作られた従来型の社員食堂は、時代に合わなくなってきています。

オフィスの「食」に関して、働く人と企業の現状はどうなっているのでしょうか。コクヨが2025年に日本国内で働く人約3000人に対して行った調査のデータを交えながら、詳しく見ていきましょう。

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働き方お役立ち資料 WORK VIEW 2025 職場の食が満たすもの

出社しても孤独な社員ー短時間のデスクランチが常態化

コクヨの調査では、働く人が昼食の時間を過ごす場所は「オフィスのデスクスペース(33%)」がトップ、次いで「自宅(20%)」で、この2つが「オフィスの社員食堂・カフェテリア(15%)」や「飲食店(13%)」を上回りました。また、ほとんど毎日「昼休みは意識的にひとりで過ごすようにした」という人が全体の31%存在し、昼食にかける時間については「1-10分」または「11-20分」と応えた人が全体の6割を越えています。

コロナ禍の2020年には17.5%まで低下していたオフィスへの出社率は、2025年には73.4%まで回復しました。しかし、外出や会食が制限されていた時期を経て、出社回帰が進んでいる現在においても、「デスクで、1人で、短時間に」昼食をとるワーカーの傾向が見て取れます。

オフィスの食堂、どう作る?ROIを高める空間設計のポイント【事例あり】02

「WORK VIEW 2025」より

約7割の企業が食関連の施策を実施

現在、多くの企業が食関連の施策を見直し、企業に対する社員の満足度向上や、エンゲージメント強化につなげようとしています。約7割の企業が何らかの食関連の施策を実施しており、特に社員食堂は37%と最も多くの企業が導入しています。

なお、食にまつわる福利厚生がある企業の従業員の満足度は91%で、食にまつわる福利厚生がない企業の満足度は78%。食に関する施策は社員の満足度を高め、離職防止やエンゲージメントの向上にも寄与すると考えられます。

オフィスの食堂、どう作る?ROIを高める空間設計のポイント【事例あり】03

「WORK VIEW 2025」より

食事補助は福利厚生の充実から「従業員ウェルビーイングの向上」へ

かつて社員食堂や会社による食事補助は、終身雇用で社員の生活すべてについて面倒を見る日本的経営における代表的な福利厚生施策でした。しかし、働く人の価値観や働き方が多様化する現代において「食」に関する施策は、企業価値の根幹となる「人的資本」への投資という位置付けに変化してきています。

法政大学人間環境学部の湯澤規子教授は、オフィスの食にはコミュニケーションの活性や創発といった「活動の場」であると同時に、「休息の場」としての役割も期待され、オフィスの食堂について考えることが持続的な働き方やウェルビーイングに通じていくという考えを、コクヨによる調査レポート「WORK VIEW 2025 職場の食が満たすもの」の中で述べています。

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人的資本経営とは?担当者が知っておきたい基礎知識と、推進・実践の具体的なポイントを解説

2.オフィスに社員食堂を設けるメリット

オフィスの「食」に関するさまざまな施策の中でも、とくに多くの企業が取り入れているのが「社員食堂」や「カフェテリア」です。

ボンディッシュ株式会社が2026年に行った調査によると、「社員食堂を導入したことによる効果・変化は何ですか?」という問いに対し、社員食堂を導入した企業の担当者77.4%が「社員満足度が向上した」と回答しています。

社員食堂の導入は、働く人と企業に対してどのようなメリットをもたらすのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

コミュニケーションの活性化

社員食堂は、食事をするだけでなく、部署の垣根を越えた「偶発的な出会い」や、リラックスした雰囲気の中での「深い対話」を生み出します。社員食堂やカフェテリア等が充実していると、同僚と一緒に食事をする機会が増え、働く人の孤独感を軽減します。

ボンディッシュ株式会社の調査では、36.4%の企業が「社員同士のコミュニケーション促進」を社員食堂導入の目的として挙げており、社員食堂導入後の変化として75.7%の企業が「社員同士のコミュニケーションの場になった」と回答しています。

社員の健康管理

社員食堂は、栄養バランスの整った食事を提供することで、社員の生活習慣病の予防やメンタルヘルスケアに寄与します。また、オフィス内で手軽に食事が摂れることで、「忙しくて昼食を抜く」といった状況も防げます。

ウェルビーイングの前提となる「心身の健康」を守ることで、持続可能な働き方を後押しする存在と言えるでしょう。

生産性の向上

執務スペースから離れて「物理的に仕事のスイッチを切る」場所があることで、脳がリフレッシュされ、生産性が向上します。もちろん、バランスの良い食事をしっかり摂ることで、午後の仕事のパフォーマンスを高める効果も期待できます。

ボンディッシュ株式会社の調査では、67.9%の企業が社員食堂導入後の変化として「業務面での成果があった」と回答しています。

エンゲージメントの強化

「会社が自分たちの健康や居心地を大切にしてくれている」という実感は、会社への信頼と愛着を高め、離職率の低下に寄与します。また、昼食時のコミュニケーションは社員同士の信頼関係の醸成や組織文化の強化につながり、社員のエンゲージメントを高めます。

食に対する投資は、現役の社員だけでなく求職者にとっての企業の魅力も向上します。ボンディッシュ株式会社の調査では、65.2%の企業が社員食堂導入後の変化として「採用面でメリットがあった」と回答しています。社員食堂の設置は、採用ブランディングへの効果も期待できるでしょう。

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採用ブランディングに効く!「働きたい」と思えるオフィスの作り方【事例あり】

3.社員食堂導入のネック(デメリット)と解決策

企業と働く人にさまざまなメリットをもたらす社員食堂ですが、企業の規模やオフィスの状況によっては、導入にあたってさまざまなハードルがあります。

導入時のネックとなるデメリット、その解決策についても確認しておきましょう。

運営コストと初期費用

社員食堂導入時のネックとして、「運営コストが継続的にかかる」が35.7%、「初期費用が高そう」が32.8%となり、費用面に不安を感じる企業が多いことが見て取れます。

調理設備をともなう食堂を設置するには、水道やガスの引き込みを含む大規模な工事が必要になる場合があり、食堂の運営には人件費や光熱費も継続的にかかってきます。しかし、調理は外部サービスを利用し、社内には調理設備を持たないという選択肢もあります。

現在は「食」に関する多様なサービスが存在し、オフィスにスマート冷蔵庫を設置するタイプの社食も増えています。ほかにも、キッチンカーに来てもらう、ケータリングのお弁当をオフィス内で販売する等の方法もあります。

社員にとって大切なのは、仕事から離れてリラックスした環境で食事ができる空間が、オフィス内に存在していることです。何もかも自社内で賄うのではなく、企業の規模や予算、使用可能なスペースに合った食堂のあり方を検討してみてください。

利用者ニーズの読めなさ

費用の次に多く挙げられていたネックが「どのくらいニーズがあるかわからない」という点です。これは「社員食堂を設けてもムダになるかもしれない」という不安から生じていると考えてよいでしょう。

食堂のみに特化した空間を設けてしまえばお昼時以外は活用されないため、どうしてもムダが出ます。これを防ぐために、食堂空間を食事以外の多様な目的で利用できるように作ることが大切です。まずは社員の現状や希望をリサーチした上で、組織として理想の状態を描き、それを実現するための食堂をデザインしましょう。

その際には、社員食堂の構築に知見を持った外部のコンサルタントを活用するのも1つの方法です。なお、コクヨでは、ありたい組織の姿を引き出すコンサルティングから、利用者ニーズに応える食堂の設計・構築までワンストップでお手伝いしています。

関連サービス:
ソリューション|空間|コクヨ

4.おしゃれなだけじゃない!ROIを高める食堂空間のポイントと事例

おしゃれなインテリアや快適なレイアウトの食堂は、オフィスの魅力を高め、企業に対する社員の誇りや愛着にもつながります。しかし、企業の担当者が意識すべき点は、食堂の見た目や社員の満足度だけではありません。食堂の構築を企業価値につなげるには、空間への投資がもたらす効果(ROI)をいかに高めるかという点が重要です。

ここからは、空間を最大限に活用できるオフィスの食堂を作るためのポイントと、企業事例をご紹介します。関連記事ではより多くのポイントや事例をご紹介していますので、あわせてご覧ください。

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おしゃれな社員食堂レイアウト事例とデザインのポイント

オフィスの食堂、どう作る?ROIを高める空間設計のポイント【事例あり】06

コクヨHQオフィス

食事以外にもフル活用できる、マルチパーパスなエリア設計

空間の効用を最大化するには、社員の多様な過ごし方のニーズに応えられるよう、さまざまなタイプのエリアを用意しましょう。

それによって、1人でさっさと食事をしたい、少人数でゆったり過ごしたい、大勢でワイワイ食べたいなど、休憩時間のさまざまなニーズに応えられるだけでなく、お昼時以外はワークスペースとしても活用しやすくなります。

たとえば、カウンター席ではソロワーク、ソファー席では打ち合わせ、リラックスラウンジではリフレッシュなど、目的によって使い分けることができます。柔軟に活用できる空間を作るためには、PC用電源の設置や、移動しやすい家具の導入なども欠かせません。

オフィスの食堂、どう作る?ROIを高める空間設計のポイント【事例あり】07

「食堂リニューアルの構築ポイント」より

①

テーブル席

・カジュアルな打ち合わせ
・チームでの軽い相談
・イベントやセミナー会場

②

ソファー席

・カフェ気分でソロワーク
・リラックスしたランチミーティング
・個別ミーティング

③

ソロカウンター席

・短時間でのPC作業
・集中したソロワーク
・休憩やリフレッシュ

④

ビッグテーブル席

・自然と人が集まるマグネットスペース
・ワークショップ開催

⑤

リラックスラウンジ

・深いリフレッシュ
・少人数での雑談
・オンとオフの切り替え

誰もが居心地よく使いやすい家具

オフィスの食堂は、不特定多数の人がさまざまな用途で使う場所です。そのため、誰にとっても心地よい家具や内装を心がける必要があります。あらゆる体格や身体的特性を持った人が快適に使うことができ、なおかつ空間にマッチしたおしゃれな家具を選びましょう。

おすすめなのは、多様な人が使いやすいインクルーシブデザインを取り入れた家具を採用することです。コクヨのコクヨの「HOWS DESIGN〈ハウズデザイン〉」では、企画段階から多様なユーザーが参加し、社会のバリアを発見することで、誰もが自分らしくいられる社会をつくることを目指しています。

社員目線で考える、リラックスできる空間デザイン

「食事」という機能一辺倒で空間デザインを選ぶと、どうしても無機質で、社員にとってリラックスできる空間ではなくなってしまいます。さまざまな過ごし方に合わせたエリアを用意すると同時に、各エリアの目的に合った色彩や素材、照明を選び、統一感のあるインテリアを取り入れましょう。
内装デザインは、社員の「オン」と「オフ」を切り替えるスイッチの役割も果たし、集中や対話、開放感やリラックスを自然と促すツールにもなります。音響や視線への配慮、植栽の配置など、ユーザーである社員の目線に立って、細部まで配慮することで、社員の利用を促進し、空間の効果を高めることができます。

ストレスフリーなレイアウト

人が密集しやすい場所での適切な通路幅の確保や、用途に応じた適切なテーブルサイズの選定は、社員が無意識に感じるストレスを最小限に抑え、居心地の良さを高めるための大切な要素です。食事とPC作業の両方を想定し、物理的な障壁を取り除き、心理的安全性を確保するために意識したいポイントは以下の5つです。

1.十分な通路幅のあるメイン動線の確保
2.空間の用途に応じたテーブルサイズの選定
3.心理的負担を軽減するリフレッシュエリアの設置
4.リラックス効果のあるグリーンの配置
5.他者からの視線を外すカウンター席の設置

空間の利用を促進する仕組みや制度の設計

どれだけ魅力的な空間を使っても、社員にその良さを知ってもらわないことには、利用する動機につながりません。食堂の利用を促進するには、社内のさまざまなメディアを通じたプロモーション、食堂でのイベント開催、食事補助など、仕組みや制度を工夫する必要があります。

たとえばコクヨでは、普段は出会わない社員同士をマッチングしてランチを設定するアプリを、情報システム部門の有志メンバーが開発しました。昼食の時間を社内のつながり構築に活かす、実験的な取り組みです。

多様な過ごし方ができる食堂空間の構築と、ランチの時間をクリエイティブに生かす組織風土の醸成を同時に進めることで、空間の効果をより高めることができます。

【企業事例/パナソニック コネクト株式会社】交流とイノベーションを生み出す食堂空間

博多区美野島にある福岡事業所では、食堂を社員の交流を生み出す空間として『ミノスク( MINOSHIMA SQUARE ) 』と名付け、リニューアルしました。エントランスには「ミノスク」のシンボルサインとベンチ、天井には福岡らしく「やぐら」のデザインを採用。畳に座って家のようにリラックスできる「くつろぎエリア」、植栽とカラフルなプラントボックスをアクセントにした活気のある空間「にぎやかエリア」、ゆとりのある空間に可動式の家具でフレキシブルに使える「つながるエリア」の3つのエリアを設け、自由な働き方・過ごし方が選択できる環境を実現。リニューアル後には、参考書を開いて勉強をしている人や、上司部下でコーヒーを飲みながら話している姿が見られ、イベントの開催などランチタイム以外にも幅広く活用されています。

5.小さな空間から始めるなら「カフェスペース」がおすすめ

大規模な工事を行って食堂を作るのが難しい場合は、「カフェスペース」の設置がおすすめです。

カフェスペースとは、単にお茶やコーヒーを飲みながら休憩するだけなく、木目調の家具や植栽などで「まるでおしゃれなカフェにいるかのような空間」を演出し、リラックス効果やリフレッシュ効果をもたらすよう設計された場のことです。

社員が気軽に利用できるように執務スペースの一角に設けられるケースが多く、自然と人が集まり偶然の出会いやコミュニケーションが生まれる「マグネットスペース」の役割も果たします。コクヨが2021年に社員500人以上の民間企業に勤めるワーカーを対象に実施した調査によると、オフィスの中で部署を超えたコミュニケーションが活性化するスペースは「カフェスペース」(36.6%)が1位となっています。

食堂よりも小規模のスペースでも、社内コミュニケーションの促進や、リフレッシュによる生産性向上、従業員エンゲージメント向上などにおいて大きな効果が期待できる施策です。

6.まとめ:社員のウェルビーイング起点の食投資が企業価値につながる

社員食堂などオフィスの「食」に対する取り組みは、単に企業が社員に対して与える福利厚生の1つではありません。企業価値の根源となる「人的資本」への投資としてとらえることで、社員の働きやすさや働きがい、社内コミュニケーションの促進、組織文化の醸成など、目指すべき成果が見えてきます。

そこで大切なのは、食堂を単に「食事」という機能面からとらえるのではなく、「社員のウェルビーイングに資する空間」としてとらえることです。オフィスの移転やリニューアル、福利厚生制度の見直しなどのタイミングは、「食」に関する取り組みと企業価値の関係について考える良いきっかけとなります。ダウンロード資料では食投資のROI向上につながる情報をさらに詳しくご案内していますので、ぜひご活用ください。

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